2016年3月21日月曜日

隠れ栄養失調の読み方・ 3 BUN(尿素窒素)


AST と ALT」からのつづきです。

BUN(またはUN=尿素窒素)という項目も、よくある検査の一つです。一般的には腎臓のフィルター機能がうまく働いているかを診る指標で、フィルターが詰まっているような状況では血液中のBUNが上昇します。

だいたい22以上になると、ウーーーームという事になるのですが、こちらも前項のAST ALTと同様に「それ自体が何なのか」という使われ方がされていません。ということで、栄養医学療法はそこに着目します。

総蛋白のところで書いたように、私たちの体は新陳代謝により、常に新旧が入れ替わっています。古いタンパク質が分解され、同時に新しいものが造られ、置き換わります。

その過程で最終的に「BUN=尿素窒素」というものが造られ、腎臓から排出されます。

腎臓の機能が正常ならば、BUNはフィルターで分別されてオシッコになって出て行きます。フィルターがおかしければ(腎臓の機能が低下していれば)血液中にいつまでもBUNが残っており、数値が上がったままになります。

すると腎臓の機能が正常ならば、BUNの数値はタンパク質をどれくらい動かしたか、つまり代謝量を反映することになります。数値が低ければ代謝量が少ない=活性が低い=不定愁訴が出やすい、という事になります。私たちはその原因がどこにあるのかを探します。

大きな病気がなければ、一般的にBUNが低い原因には以下のことが考えられます。

  1. 単純にタンパク質を食べる量が少ない
  2. 食べるタンパク質の種類が悪い(必須アミノ酸の欠如)
  3. 胃炎腸炎で吸収率が低下している
  4. 高齢で吸収率や利用率が低下している
  5. ビタミンB群不足

筆頭はそもそもの食べる量の不足ですが、では何でもいいからタンパク質を食べれば良いかというとそうではなく、必須アミノ酸が全て含まれている事が重要です。これについてはまた別に書く事にしましょう。

それから、せっかく良いタンパク質を食べているのに、胃炎や腸炎で消化吸収が悪かったり、高齢者で利用率が落ちているとBUNは上がりません。ですから高齢になるほどタンパク質は食べてくださいという事になります。

当然よく噛まなくては消化吸収は落ちますし、歯が悪い人は食べる量が少なかったりで、そのまま利用率の低下となります。

それから胃にピロリ菌がいると胃炎で消化が悪くなり、タンパク質が吸収されにくくなります。

そしてもちろん、前項で書いたビタミンB群の不足です。代謝が落ちるので、当然BUNも下がります。


BUNはだいたい18あると安心ですが、残念ながら低い方しか診たことがありません。私が今まで診た一番低い方は7で、さすがにいろいろな不定愁訴をお持ちで、結局通院が途絶えてしまいました。

7ということは腎機能を診るための基準値も下回っているのですが、内科では何も言われなかったそうで、さらに婦人科で不妊治療も受けておられました。栄養療法に詳しい婦人科の先生に言わせれば、無茶な話です。当然歯科治療も厳しいはずです。

では逆に高い方は、以下のような事が考えられます。
  1. 本当に腎臓が悪い
  2. 低栄養や過度なストレスで、体が筋肉などを分解してまでも必要なタンパク質を確保している
  3. 胃腸から微少な出血が持続している
  4. 甲状腺機能亢進症
  5. 脱水
  6. スポーツ選手などで意図的に高タンパク・高ビタミンにしている

たとえば、一見普通そうな方が初診で来て、BUNが22を越えていたら腎臓の機能を疑った方が良いでしょう。

本当に腎臓が悪いと困りますので、クレアチニンという項目と合わせてeGFRという数値を算出します。これが50以下だと確かに腎臓の機能障害が強く疑われますが、そうでなければBUNはそのままタンパク質の代謝量の指標としていいようです。

タンパク質を食べる量が少なすぎると、体は筋肉を分解してまでしてタンパク量を確保しますので、BUNが上がってきます。ですから食事内容を知る必要があるのです。

また意外なのは、胃腸炎で出血が持続している方。出血した血液の良質なタンパク成分を腸で再吸収していますので、タンパク質を食べている以上の値が出てきます。

おもしろいのが6番目で、筋肉増量など意図的に栄養を入れている人は21くらいにまで上がります。私も意図的にビタミンB群を摂っておりますので、21まで上がった事があります。もちろん何の問題もございません。

タンパク質は体を作る原材料で、食いだめができないので、毎日きちんと摂る必要があります。だいたい体重1kgあたり1~1.5gは必要です。

誤ったダイエットや糖質制限でタンパク質量が不足している方はBUNが落ちてきますが、たとえばBUN が9の人は、体重1kgあたり0.5gのタンパク利用量なのだそうです。必要量は1.0~1.5gですから、これでは1/2~1/3という低栄養です。

牛肉の20%がタンパク質だと仮定すると、体重50kgの人は1日に250~375gの牛肉をたべないと十分な代謝量に達しない事になります。

歯科口腔外科においてタンパク質の代謝は、傷の治り・免疫・神経伝達などに直接影響します。BUNは総蛋白・AST ALT などと合わせ、隠れ栄養失調の状況を早めに掴む事に有効です。

特に歯周病治療やインプラントをご使用の方には、その長期維持の指標として、必ず把握しておきたい項目です。

もちろんBUNも上がる要因と下がる要因が同時にくるとマスクされますので、他の検査値と合わせて注意して読んでいく必要があります。

次回は意外な盲点である「鉄」について書いてみます。


2016年3月20日日曜日

3月27日は札幌サテライトセミナーへ


来週の日曜日に迫ってまいりました、日本顕微鏡歯科学会の札幌サテライトセミナーの準備をしています。

サテライトセミナーは顕微鏡がまだ普及していない地域に講師を派遣し、顕微鏡を用いた治療の周知普及を目的に行われています。今まで青森・山形・鹿児島で行われてきましたが、第4回目となります。

今回のセミナーは、4月23日より開催される札幌での学術大会のプロモーションも兼ねています。いきなり大会に来てハイレベルな話を聞いても、初心者の先生にはちょっとハードルが高いかもしれませんので、イントロダクション的な話になります。

ちょうど4月より健康保険に顕微鏡使用による点数加算が一部に加わりますので、興味のある先生は多いのではないでしょうか。

当日はもちろん各社顕微鏡の展示がありますので、北海道の先生はビッグチャンスですね!

非会員は¥5,000ですが、会員は無料ですので、当日入会で聴講が無料となります。しかもスタッフ2名までが無料とは、なんと気の利いた学会なんでしょう!

今回も遠方からの参加登録があり、ありがたい話です。お申し込みは以下のパンフレットにご記入のうえFAXでお申し込みください。


***

顕微鏡 一部保険導入決定!

日本顕微鏡歯科学会主催 サテライトセミナー

札幌での学術大会迫る!この機会に「顕微鏡歯科治療」について知ろう!


4 月 23、24 日に札幌で開催される日本顕微鏡歯科学会学術大会 に先立ち、顕微鏡歯科治療の魅力を地元北海道の皆様にお伝えし たいと思い、事前セミナーを開催することになりました。 顕微鏡がもたらす感動的な歯科治療を動画でご覧いただき、学術 大会参加をさらに有意義なものとしていただければ幸いです。

【内容】
 1. 顕微鏡歯科治療とは
 2. 高い成功率の歯内治療
 3. 確実な2級コンポジット レジン修復
 4. 安全なサイナスリフト・ インプラント周囲炎治療
 5. 顕微鏡と経営

【講師】
 北村 和夫 本会理事 日本歯科大学附属病院総合診療科教授 
 吉田 格  本会事務局長 東京都中央区開業

【日時】2016年3月27日(日)13:00~16:00

【場所】北海道医療大学 札幌サテライトキャンパス
   札幌市中央区北4条西5丁目 アスティ45 12F
   tel 011-223-0207

【受講料】会員:無料 非会員:5,000 ※当日入会の場合は入会金に充当します。
     歯科医師以外のスタッフ(歯科衛生士、助手)は2名まで無料

【協賛】札幌歯科器材株式会社 株式会社ジーシー 株式会社松風
    デンツプライ三金株式会社 白水貿易株式会社
    株式会社モリタ 株式会社ヨシダ

【申込・問合せ先】札幌歯科器材株式会社 (担当 中田) TEL:011-231-4033



2016年3月18日金曜日

隠れ栄養失調の読み方・ 2 ASTとALT


総蛋白」からの続きです。

血液検査で必ずと言ってよいほど測る項目に ASTとALT があります。昔は名前が違って GOT と GPT と呼ばれていましたが、同じものです。

両者とも、一般的には肝炎を診断するときの代表的な指標です(ほかにもいっぱいありますが)。肝臓の細胞が炎症をおこし壊れると、その中にあるASTとALT というものが血液中に漏れてくるので、通常よりも数値が上がります。だいたい40を超えると、ちょっとどうしようかなという事になりますが、それ以下で基準値に入っていれば機械的に異常ナシと言われるのが普通の検査の結果です。

しかし栄養医学療法はそうではなく、ASTとALT とは本来何をしているのかという点に着目します。他の検査項目や食事記録と照らし合わせ、それがきちんと働いているかを読むわけです。

では本来の働きとは何か。いくつかあるのですが、代表的なのは、肝臓でアミノ酸を他の形に変換する酵素(触媒)としての働きです。

ALTはアラニンというのをピルビン酸というものに造り変える酵素で、ASTはアスパラギン酸というものを同じくピルビン酸に造り変えます。ざっくり言えば、タンパク質をきちんと動かせるか(代謝っていいます)の指標となるわけで、これは生命活動の基本です。

このピルビン酸は連続して糖(グルコース)に変換され、血糖値(血液中の糖分)を一定量に維持します。これを「糖新生」と言いますが、AST ALT の動きが悪いと糖新生までうまくたどり着かず、食後4時間くらい経って血糖値が落ちてきても歯止めがきかずに下がりすぎたりします。ここで眠気やハギシリ・不定愁訴が出やすくなります。

おもしろいのは、ALTは筋肉の中ではピルビン酸をアラニンに造り変える酵素として働きます。つまり、さっきの肝臓とは逆です。そのアラニンは血流に乗って肝臓に戻り、またピルビン酸から糖へ変換…つまりグルグル廻っているのです。これを「グルコース アラニン サイクル」と呼んでいます。

ということは筋肉の量がある程度ないと、タンパク質はうまく廻らない=全身の代謝や活性が低い、すなわち不定愁訴が出やすいという事になります。

タンパク質がどれだけ動いているかを診る指標としては、ほかにBUN(尿素窒素)とか LDH(乳酸脱水素酵素)なども必要です。特にBUNは重要なので、また後でお話しいたします。


肝機能に異常がなく正常にタンパク質が動いているとすれば 、AST も ALT もだいたい20~25になることが経験的に知られています。



ところが調べてみると、かなり低い方が大勢いらっしゃいます。15以下ともなると、歯周病やインプラントの長期維持管理はちょっと難しいのではないかと思います。細菌からの攻撃に耐える力もだいぶ落ちているはずです。基準値には入っているとはいえ、それは肝炎の可能性を診るための指標ですので、タンパク質の代謝を考えれば明らかに低いのです。


さてほとんどの場合、ASTよりもALT の方が低い事に気がつきます。実はその理由が重要です。

採血をすると検査会社の営業マンがきて、採血した容器(採血菅)を会社に持って行きます。そこには自動測定器があって、多くの項目がすぐに出てきます(日数がかかる検査もありますが)。

ここで一つ疑問があります。採血〜測定には数時間のタイムラグがありますが、その時間内に血液が変質することはないのでしょうか。ナマ物ですから時間だけではなく、運搬中の振動や気温による影響はないのでしょうか。つまり、採血後にすぐ測るのと数時間後での違いはないのでしょうか?

実は「ある」のです。

特にALTは血液中のタンパク分解酵素の影響をモロに受けて、値がどんどん下がっていきます。これでは信憑性がありません。そこで分解されないように工夫した専用の採血菅があるのですが、なぜか日本だけはそれを使えません。理由は不明です。

ということで、日本の検査データーは国際的な研究や診断と比較もできない不思議な状況なのです。コマッタコマッタ(´・_・`)

で、さらに重要なのはここからです。

先ほどの採血菅の工夫とは何かと言うと、中にビタミンB6が入っています。ALTはこのビタミンB6があることで初めて働き安定し、タンパク質分解酵素の影響も受けにくくなります。つまり時間の影響を受けにくくなり、正確な値が出てきます。

すると、そうではない日本の検査においてASTとALTに差がある方は、最初からビタミンB6が不足していると予想がつきます。

事実そのような方に肉など十分なタンパク質食べていただきながらビタミンB6をサプリメントで補給していただくと、数値が20くらいで揃ってくる同時に、不定愁訴のいくつかは解決しています。

ビタミンB6はいろいろ理由があって、他のビタミンB群(1.2.12.ナイアシンなど)とセットで不足します。ですから市販のサプリメントのほとんどがセットになっています。

**

ASTとALT の読み方が難しいのは、例えば何か薬を飲んでいると肝臓に負担がかかりそれだけで数値が上がる事です。隠れ栄養失調があるのに薬を飲んでいると、下がっているところに上がる要因が加わるので、見かけ上は良い値に見えることがあります。これを「マスクされている」と言い、マスクに騙されないようにするためにも他の検査データーや食事記録と照らし合わせる必要があります。

γ-GTPという検査項目があるのですが、これとAST ALT の数値が揃うと、だいたい正常でマスクもないと判断します。

また溶血傾向がある方や、ランニングなどの衝撃で足の底で赤血球を押しつぶしている方は、赤血球中のASTとALT が壊れて漏れてくるので、測定値が若干上昇します。

検査とはすべてそうなのですが、初回はマスクが多すぎて判らない項目が多いことを念頭に置かなくてはなりません。初回の結果を推理して食事改善などをしていただくと、二回目の検査でマスクが外れてきて本来の値が出ることがよくあります。

歯科口腔外科学では以上のようなことを勘案し、タンパク質の代謝が円滑なのかを推察します。特に歯周病・インプラント・顎関節など、骨や歯肉という代謝する細胞を扱う分野での栄養は重要で、治療や長期予後戦略に役立てます。

現在も低栄養やタンパク代謝低下の危険性はほとんど知られていません。手術や材料の技術が上がったこともあり治療成績は決して悪くないので、栄養はとりたてて重要ではないと思われています。

ただしそれは5年予後くらいの話で、例えばインプラント周囲炎が目立って増えていることを考えても、対策としてもはや栄養は無視できない存在です。

また、最近多いと感じるのですが、大きなムシ歯の治療でもないのに、神経が損傷して抜髄になってしまうこと。これはまだ測った事がないのですが、隠れ栄養失調が絡んでいるのではないかと思っています。

ビタミンB群を適正量に保ちタンパク代謝を正常に近づけることは、栄養医学療法の基本的なことなので、サプリメントの出番が増えています。診療室ではヘム鉄と共に、常に在庫を切らさないようにしているほど重要な位置付けです。

ASTとALTはよくある検査であるにもかかわらず、本来の意味として活用されていないのが現実です。検査データがお手元にある方は上記を参考に、気になることがあれば栄養医学療法に詳しい医療機関で診ていただくことをお勧めいたします。

次回は、BUNについて書いてみます。


2016年3月16日水曜日

ビタミンDの効果に期待する


インフルエンザが一段落し、花粉症の季節となりました。隠れ栄養失調に気づかないままの方には、まだまだ厳しい日が続きます。

こんな時に何か一つだけサプリメントを試してみたいという方に、私はまずビタミンDを1日あたり5000単位はどうかと話します。

以前、朝日新聞の記事を元ネタに「くる病」の話題をとりあげましたが、ビタミンD不足はけっこう深刻なのではないかと思います。

ビタミンDは日光に当たる事で皮膚内で合成されますが、冬場は日には当たりませんし、夏場でもUVカットを塗っている方では、合成量はたいへん少ない事が知られています。食材からの補給も十分には期待できず、サプリメントに頼らざるをえない状況です。

私のところでは血液検査で「25OH Vit-D」という項目を用いてビタミンDの不足を診るのですが、基準値7~41に対し、10~20の方が圧倒的に多い。しかもこの基準値自体が非常に低く、じつは50以上欲しいのです。



栄養不足の概念は「欠乏症」の発見から始まりました。だからその欠乏症が表面化しなければ、足りていると判断されてしまいます。もちろんそれでは遅すぎです。

ビタミンDは骨と腸に作用して血液中のカルシウム濃度を維持する働きがが知られていましたが、それ以外にも免疫系と心臓血管へもかなり関与している事が解ってきました。

歯科口腔外科では、歯周病やインプラント治療で骨の代謝は重要ですから、治療前もメンテナンス時も25OH Vit-D の値を追い続けます。副次的にアレルギーやウィルスからの問題が解決される事もあるようで、期待しています。

実は今お一人ビタミンDのサプリメントを始められた方がおられ、ブログにアップされていますのでご紹介いたします。

《美肌へのアンチエイジングマニア》

一般に栄養は、具体的に欠乏症がでなければ「不足ではない」と判断されます。貧血がなければ鉄は十分・壊血病でなければビタミンCも十分とか、機械的な判断をされる場合がほとんどではないでしょうか。

そういう表面的な話ではなく、体の奥底で何が起きているのかが解らなければ、病気から歯を守る事はできない、今はそういう時代です。くる病になる前に、特にお子様をおもちの女性は注意してほしいものです。

ちなみに私個人の25OH Vit-Dは夏には70くらいあったのですが、12月の測定では50ちょっとまで落ちてきました。夏場は河川敷を走ったりしてそこそこの紫外線に当たっていたのですが、冬はまったく日に当たらないからでしょう。食材で摂るのは無理なので、今はサプリを入れて様子を見ています。おかげさまでカゼもひかず、花粉症もありません。

絶対に病気で休めない小規模医療機関ですから、せめてこれくらいはやって患者さんのお手本とならねばならないという事情もありますが。

体調が悪く、せっかくの診療をキャンセルするってもったいないですよね。皆さんもぜひ栄養医学療法を取り入れて、細胞ができるだけ正常な状態で治療を受けてみてください。

2016年3月15日火曜日

4・保険医療機関で行う自由診療

4・保険医療機関で行う自由診療

保健医療機関で行う自由診療は、混合診療にならない範囲で行われなくてはなりません。したがって保険証を窓口で出した方には、保険に収載されている項目は保険で提供されなくてはなりません。

しかし歯科の場合、材料を保険では使えない「健保適用外」の高品質なものに変える事で、合法的に自由診療に変更する事ができます。昔からよくある「金合金」を使うクラウン(冠・被せ物)や、メタルボンドと呼ばれる白いクラウンがそれに該当します(これらが具体的にどう優れているかはまた後で記します)。

また最近コンポジットレジン修復や根管治療を、自由診療でも行う保健医療機関が増えています。しかしこれは法に抵触する可能性のあるグレーゾーンで、様々な解釈が混在しています。

歯科医院側が合法と言える理由付けをしようとするなら、ここでも「健保適用外」の材料を用いることです。例えばコンポジットレジンによるムシ歯の修復の場合、使用するコンポジットレジンをそのような製品で行えばだいじょうぶなはずです。その製品を使って保険請求すれば違法となるからです。同じく根管治療も、健保適用外の充填材(セメントなどの詰めもの)を使えば自由診療扱いになるはずです。そして現実にそのような製品が国内で販売されています。

しかし健康保険には「時間」という概念がありません。また「丁寧・粗雑」「熟練者・初心者」という区別もありません。したがって、たとえば「顕微鏡を使って丁寧に行っているから自由診療だ」というのは理由になりません。何を利用しようが、いくら時間がかかろうが、関係ないのです。しかし顕微鏡の使用は真に患者利益となるものですから、もしかしたら行政は黙認しているのかもしれません。

なお先にも書いた矯正治療やインプラントは、特殊な場合を除いて最初から健康保険の適用ではありませんので、そのまま自由診療となります。

蛇足ですが、健保適用外(自由診療用)のコンポジットレジンは、実は健保適用のコンポジットレジンと中身は同じで、パッケージを替え、価格を上げただけではないかという話があります。健保適用の材料といっても、中身は最高品質であるからです。それなのに保険と自由診療の結果が違うということは、やり方の良し悪しが結果を左右するということで、時間をかけて丁寧に行う事が自由診療でもっとも大切な事であることが解ります。

〜つづく

3・自由診療はなぜ必要なのか

3・自由診療はなぜ必要なのか

健康保険のやり方では歯は守れなかった、これは高齢者のお口の中を診れば誰にでも解ります。したがって良識ある医療人であれば、別の提案を患者さんにしなくてはなりません。それが世界基準に則った自由診療です。

たとえば歯科医師本人やその身内が歯の治療をする場合、まちがいなく保健外の技術を求めます。それは決して贅沢ではなく、最高のものを求めた結果でもなく、最低限必要なことだと知っているからです。保健での決まりごとで安心する歯科医師は、日本には一人もいないはずです。

しかし高度な治療とは、ある程度の予算と時間がかかる場合が多いのは事実です。専門知識を持たない患者さんにしてみれば考えるのも面倒ですので、中身もよく調べないまま安易に健康保険を選択してしまう事が多いのです。

熱心な医療機関であればあるほど説明する時間を長くとるのですが、その時間分は収入がありません。説明専門のスタッフを雇うところもあります。コストがかかるのです。それでも自由診療が成約にならない場合、さらに赤字が拡大します。また、患者さんは転院してしまうかもしれません。そんな努力は無駄だと考える歯科医師も当然おられます。

根管治療に限らず充分な治療を行おうとすると、最初から予算が決まっている健康保険では間違いなく大きな赤字となり、医院は継続できません。にもかかわらず、ほとんどの歯科医院は経営を続けています。どうしてそのような事ができるのかというと、それは根管治療の後につづく補綴(ほてつ:人工物で歯の形を復元すること)を自由診療で行う事で赤字を補填しているからです。

また矯正治療やインプラントなど、最初から健康保険にはない治療を行えば、ある程度保険で生じた赤字を埋めることができます。昔の私を含め、ほとんどの歯科医院ではこのようにして借金を返し、従業員に給料を払っているのです。

自由診療というと、すぐ金儲け主義だとか、贅沢とか、表面しか見ない人が少なくありませんが、大きな間違いです。みなさんも窓口で払う健康保険分の医療費を、ぜひ疑問に思っていただきたいのです。


2・日本独自の法解釈、混合診療

2・日本独自の法解釈、混合診療

ではその健康保険の一部負担金(窓口で払うお金、多くは3割負担)以外にも治療費を独自に徴収し、治療技術に還元すれば良いだろうと誰もが考えます。しかしこれは「混合診療」という日本独自の法解釈で禁止されています。皆同一で例外は認めないというのが国の方針で、そこからあえて外す場合は、関連する一切の保険金は遡って返還しなくてはならない事になっています。

これも言葉は悪いのですが、昔の銀行の護送船団方式と同じく一番低いレベルに全体を合わせるという考えに近く、医療の現場に大きなブレーキをかけています。


  • 混合診療に対し最近なぜか所轄外である経済産業省が一部に見解を出し、注目されています。しかしそれに対し、肝心な事業主体である厚生労働省からは何の反応もなく、あたかも責任を放棄したような状況が続いています。
  • 健康保険では特殊金属を使った義歯(入れ歯)などが、追加料金で行える制度もあります。

1・健康保険の功罪

今どこの歯科医院に行っても保険診療と自由診療の説明があり、選択を求められるのではないでしょうか。なぜこのような事になってしまったのか、両者は何がどう違うのか、そして「保険医療機関で行う自由診療 」と「自由診療専門医での自由診療」は何が違うのか、私は以下のように考えています。

1・健康保険の功罪

日本は世界的に珍しい「国民皆保健制度」が完備しており、あたかも誰もが等しく最高の医療を受けられるように思われています。その思想自体はたいへん素晴らしく、もちろん私も毎月健康保険料を払い、その恩恵に感謝している者です。

発足したのは昭和36年ですから、50年以上の歴史があります。その間細かな改定はありましたが、当時と現代では医療の考え方も社会環境も大きく様変わりし、少なくとも歯科医療は大きな制度疲労を抱えながら今日に至っています。

そのため、日本だけが国際的に標準の治療すら提供できないという異常な事態に陥っているのですが、これはあまり知られている事ではありません。行政は決してそのようには言わないからです。

ほとんどの病院・医院は、国民皆保険制度を使って医療を提供する「保険医療機関」で、私のところも以前はそうでした。

健康保険による診療とは、国が用意したビジネスモデルに無条件で賛同するということで、医療機関にとっては余計な事を考えずに診療に集中できるというメリットがありました。国民全員が対象者ですから、広く患者さんを集める事ができることも経営上有利です。患者さんにっても、どこに行っても同じ料金という安心感があります。

しかし医療技術はどんどん変わり高度化しているにもかかわらず、それに見合った予算からどんどん離れて行く事を止められませんでした。たとえば根管治療という歯科の代表的な治療費は諸外国の1/6〜1/12と、一般産業界では考えられない低予算を強いられています。財政難・歯科医師過剰・患者さんの予防意識がなかなか上がらない、などがよく言われる原因です。

言葉はたいへん悪いのですが、低質医療を余儀なくされているのが日本の歯科健康保険の実態です。このことはネットで検索すれば、いくらでも具体例が出てまいります。

  • 自由診療と似たような言葉で自費治療・保健外診療というものがあります。厳密に言えば違うのですが、患者さんにとってはあまり関係ない事ですので、ここでは自由診療とさせていただいております。

自由診療専門医 7つの特徴

自由診療専門医 7つの特徴
  1. すべての治療や説明に充分な時間をかけられます
  2. 最初にお口の中の詳細な診断書が発行され情報が共有されます
  3. 予防と治療が同時進行し最良の治療効果が得られます
  4. 最初からCTによる診断が受けられます
  5. すべての治療に顕微鏡とレーザーが使えます
  6. 栄養医学療法により細胞に最適な栄養を補給しながら治療が行えます
  7. もちろん個々の治療にも健康保険とは異なる規格の治療をご提供いたします

自由診療専門の歯科医療機関とは

最良の結果を求めるには、治療より予防を先行させなくてはなりません。これにより悪くなった原因を先に排除しておけば、例えば歯肉は炎症のないきれいな状態に戻り、痛みもなく確実な型取りができるでしょう。これはそのまま長持ちする良い治療につながります。

他にも多くの利点がありますが、ほとんど知られておりません。なぜならこの流れを健康保険で行う事はできないからです。

自由診療はどこの歯科医院でも行っているものの、混合診療という日本独自の法解釈が障壁となり、保険医療機関ではせっかくの治療技術も予防と共に一貫した流れで提供することができません。

自由診療専門である私たちは保険の制約から離れ、「歯内治療」「コンポジットレジン修復」「インプラント」など個々の分野に最良の技術を提供するにとどまらず、歯科衛生士による予防処置と栄養医学療法を早期に組み合わせた回復医療をベースにした一貫性のある診療体制で臨んでいます。

銀座という地ではありますが決して富裕層を対象にしているわけではなく、本当に治そう・長持ちさせようという方のために在ります。


ホームページ改編中 コンテンツを先行公開!

私たちは制約の多い健康保険制度を利用しない「自由診療専門」の歯科医療機関ですが、保険医療機関で行う自由診療とは具体的にどう違うのかがもう一つ明確になっておらず解りにくかったと思います。

今ホームページの改編準備をしているのですが、この辺りの説明も必要と思い、文章を造っています。

せっかくなので、先に出来上がったものからブログにアップして行こうと思います。「〜つづく」をクリックして、お読みになってください。


2016年3月10日木曜日

コンビニからすべての食料が消えた日


5年前の3月11日、あなたは何をしていましたか?そして、何を考えましたか?あの日の教訓は活かされていますか?


14時46分、私はRoom-B で普通に診療をしていました。といってもとても簡単な処置だったので、大きな揺れがあってもたいした事はありませんでした。手術中だったらちょっと焦ったかもしれませんが。

揺れを感じた時、これは今までの地震とは規模が違うなとは思いましたが、まさか史上最大の惨事になるとは思いませんでした。

治療を切り上げ患者さんと話しをしていたのですが、しばらくすると衛生士が飛んできて「先生、テレビテレビ!たいへんな事になってます!」と言うわけです。何事かと思いフロントに行くと、テレビには何かがゴロゴロ流されている様子が映っています。私は最初何なのか解らなかったのですが、近くに寄ってよく見ると、これが自動車だったわけです。津波による濁流が何台もの自動車を押し流してゆく、しばし絶句、とても今起きている現実とは思えませんでした。

ふと外を見ると、昭和通りを隔てた向かい側の歩道には、スーツ姿のサラリーマンが溢れています。皆ビルから避難してきたのでしょう。携帯電話は繋がらず、公衆電話の前は大行列です。

必要な所に安否の連絡だけとり、スタッフを早退させ、気持ちを切り替えようと近くのラーメン屋であさりバターラーメンを食べて(この頃は平気で食べていた…)診療室に戻りましたが、テレビが告げる甚大な被害を前に、異様な時間が流れて行きました。

次の日は土曜ですが、たまたま診療日でしたので、まず交通機関が心配です。当然すべての電車はストップしましたが、23:30過ぎに私が使う銀座線が運行を再開したとの報道がありました。

駅に行き駅員さんに運行状況を訊いたところ、渋谷駅ホームに人が溢れて危険なので車両を動かせないとのこと、帰宅は諦め診療室に泊まる事にしました。銀座はけっこう閑散としていましたが、やはりターミナル駅は違うようです。

翌朝お風呂に入れないかと思い、丸ノ内線始発電車に乗り、淡路町にあるスーパー銭湯に行ってみました。しかしボイラーの安全が確認できないとのことで休店、そこから歩いて神田駅前のビジネスホテル内の銭湯にも行ってみましたが、同じ理由でやっておらず、結局診療室に戻ることになりました。



何か食べようと思いマクドナルドに行くと(同じく、この頃は平気で食べていた…)、24時間営業なのにどこもやっていません。7時になりましたが、スターバックスは閉店のまま。タリーズもプロントもやっていません。流通が止まったからでしょう。そしてコンビニに入ると、ものの見事に一切の食料が棚から消えています。カップラーメンやスナックだけでなく、醤油やマヨネーズまで、こんな事ってあるんだ…

**

診療は10時から、衛生士3人はなんとか到着。意外にもキャンセルの患者さんは少なく、余震が続くものの診療は継続。しかし津波被害や原発事故の様相が明らかになるにつれ、日本の行く末はどうなるのかとはじめて本気で不安になりました。

そしてこの日から「節電」がキーワードの一つとなりました。銀座から夜のネオンが消え、一般店舗も夕方には閉店、自販機も消灯しています。都心は計画停電の予定はなく、私には電車の間引き運転くらいの影響しかなかったのは、何か申し訳ない事でした。

歯科技工や材料発注に影響はありましたが、もともとそれほど忙しい診療室ではないので、影響は微々たるものでした。

それにしても、世の中は流通の利便性への依存度が高過ぎる。そして、やはり電気をあまりに消費しすぎていた、これには誰もが気付いたと思います。

しかし喉元過ぎれば熱さ忘れるで、現在はいかがでしょう。


私はこれらをたいへん疑問に思っています。科学技術は人々の幸せのためにではなく、我儘を許容する存在になっている。スイッチ一つを消す心は定着しなかったのです。

低コスト社会を目指そうとすると、多くの大企業は衰退し、社会不安が発生するでしょう。政治はそれを望みません。

ではどうするか?個人レベルで行動を変えてゆく、これしかありません。

日本は、いや世界は、経済のためなら何を犠牲にしても構わないという構図です。社会は、環境や健康の犠牲に上に成り立っています。病気も社会の複雑化した環境を受け、私の診療室でも、型どおりの治療で済まないケースが増えています。

***

私が生きている間に、何かしらの震災はまた来るでしょう。避難用品の備えは当然として、さて危機的状況下で何ができるのか。自分が被災者になったら、どんな行動をとるのだろう。受け身にならず、みんなが協力しあう状況でありたい。だから健康弱者であってはならないのです。コンビニから食材が消えても、しばらくは持ちこたえられる健康が必要です。

震災から5年経ちますが、「その時はその時」「ダメな時は誰かがやってくれるさ」という風潮は、あまり変わっていないように思えます。せめて自分の健康だけは万全でいてもらいたいものですが、そこに気がつき実行できる人はまだまだわずかです。震災関連死に繋がるような状況を少しでも解決する事が、一番効果が有るわかりやすい対策ではないでしょうか。

私も偉そうな事を書いてますが、災害に直面すれば、やはりどうなるか自信はありません。しかしせめて健康の預金だけはしっかりしておき、運良く助かった場合にはできるだけ人の世話にならずに、また復興に手をかす事ができれば幸せだと思います。

皆さんもぜひあの日を思い出し、今何をすべきかを考えてみてください。私は健康預金をしっかりしておくことを強くお勧めいたします。

【関連Blog】
2011-03-14 3月14日からの診療について
2011-03-20 節電ポスター
2011-04-19 駅のエスカレーターはいつ動く?
2012-03-11 3.11 あれから自分は何が変わったのだろう…
2014-03025 Open Seminar vol.54 をやりました