2015年9月24日木曜日

口腔インプラント学会(岡山)に行ってきた・2 オーバーローディングとインプラント周囲炎

岡山での口腔インプラント学会での話題の続きです。



インプラント周囲炎の原因は、ざっくり言えば「細菌感染」と「オーバーローディング」の二つです。

「細菌感染」は歯周病とまったく同じで、想像がつきやすい。ただ、骨が途中まで無くなっても、インプラントが歯のようにグラグラすることはありませんので、気がつかない人がほとんどです。メンテナンスや定期検診で注意深く診なければなりません。

「オーバーローディング」とは、咬む強さがインプラントに集中しすぎ、その圧力が伝わった骨がコレはたまらんという事で、インプラントの周りの骨が逃げてゆくようなものです。

歯というものは微妙に動いて行くのですが、インプラントはまったく動かない。ですから最初は良くても、徐々にバランスが崩れてゆきます。しかしあまりに”徐々”なので、自覚する方はおられません。メンテナンス時に噛み合わせの調整をしなくてはならないのは、こういう理由からくるものです。

では噛み合わせの調整をして、強力な負担がインプラントにかからないように調整すれば元に戻るのかと言えば、戻ることもあれば、戻らないこともあります。この差はどこから来るのかと言うとまだ詳しくは解っていないのですが、私は先ほどの細菌感染の程度で差が出るのではないかと思っています。

インプラント周囲炎による骨の欠損は、歯肉に近い方から始まります。歯と違ってインプラントは歯肉と接触しているだけでくっついてはいません。なので周囲から骨に細菌が到達するのは容易です。だからきちんと磨けてないと困るのです。

さて細菌が多い状況でオーバーローディングになるとどうでしょう。インプラントは骨とガッチリくっついていますので、絶対に動かないことになっています。ところが骨とは言え、強力な力ではわずかに歪む(変形する)ので、ミクロで見れば骨とインプラント本体の間にわずかに隙間が開きます。この隙間に細菌が吸い込まれたらどうでしょう?

噛む圧力から解放されれば隙間は閉じ、細菌は排出されそうですが、中には残留するものもいるでしょう。そのような機会が頻繁にあれば、また細菌の量が最初から多ければ、残留する細菌は増えるでしょう。その細菌が定着して増殖すれば、いくらその後で歯を一生懸命磨いても、インプラント周囲炎になって行くでしょう。

このような咬む圧力による隙間への細菌のポンピングと残留は、虫歯の世界では良く知られた現象です。歯ぎしりで歯に亀裂が入り、その隙間が開く時に細菌が入り込み、しだいに虫歯になってゆく現象は、顕微鏡が使われるようになって明らかになった現実です。骨の中でも同じような事がおきているはずです。

力の問題とはひじょうに難しく、特に歯ぎしりはある程度しかたがないものと諦められています。過大な力により、インプラント周囲炎になる人もいれば、上に被せた冠が破損する人、筋肉や顎関節を痛める人、相対する歯を壊してくる人、など多様です。

しかし定期的な噛み合わせ調整で、トラブルは最小限にする事ができますので、インプラントを既にご利用でありながら検診を受けてない方は、メンテナンスシステムを持つ歯科医院にてできるだけ早く診てもらいましょう。