2015年4月1日水曜日

再根管治療の効果・2 再植術

こちらからの続きです。

顕微鏡を使い根管治療を基本通り進めて行っても、どうしても膿が止まらないなどの難かしい状況に出会うことがあります。

根管(歯の中)は複雑ですので、器具や薬剤が届かないところはたくさんあります。また細菌が歯の先端から外に漏れて根っこの周囲に定着すると、どう頑張っても歯の中からの治療では届きません。

こういうお手上げ状態になると、もう抜歯してインプラントにしましょうというパターンがほとんどではないでしょうか。

しかしもし歯の外に器具が届き細菌を除去する事ができれば、事は解決します。方法は二つ、歯根尖切除術(歯根端切除術)と再植術です。

歯根尖切除術については以前かなり書いたので、そちらをご参照ください。

歯根尖切除・インプラントにしない選択肢
歯根尖切除・インプラントにしない選択肢 2
なぜ歯根尖切除の話をしているのかというと...
歯根尖切除 vs インプラント
歯根尖切除 vsインプラント 2

で、ここでは再植術の実際について、CT画像で見ていきましょう。


再植術とは字を見ての通り「再び植える」という意味です。

根管治療の効果がなけれは通常は抜歯です。抜歯すれば、原因は歯にくっついたまま除去されるので、確かに病変は無くなり骨は回復します。しかし歯も無くなるのですから、元も子もありません。

しかし再植術は一度歯を抜きはしますが、それを捨ててしまうのではなく、感染源をお掃除して、また元の場所に戻します。ですから外見上はまったく変わらず、そのまま使って行くことができます。


治療前        治療後



左に治療前、右に治療後のCT画像を並べました。治療前にはかなり大きな病変が黒く写っています。根尖病変は舌側の歯周ポケットと交通しています。これくらい大きな病変があると、先に書いたようにすでに歯の外側に細菌が定着していることが十分予想されます。

根管治療を何回か行いましたが、やはり膿は止まらず、歯周ポケットも改善しませんでした。そこで再植術を行った結果が右の写真です。

病変はかなり改善し、骨が再生してきた状況が写っています。痛みもなく、歯周ポケットも正常になり、冠を被せて現在も経過観察中です。再植術はうまく行くと、これだけ劇的な改善をみます。

ただし抜歯する時に歯の首の部分を損傷させやすいので、最初あった骨が吸収してしまいました。それでも根の先端の骨は著しく回復、通常の根管治療だけではこのような結果にはなかなかなりません。

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再植術は、理屈で言えばたいへんすぐれた治療法です。感染源をかなり的確に除去できるからで、歯根尖切除術より確実性があります。

しかし大きな問題もあります。それは抜歯をするので、その時に歯が割れてしまうリスクがある事と、歯と骨の間にある靭帯(歯根膜)が損傷し、歯と骨が癒着してしまう可能性があることです。

前者は歯そのものが壊れてしまうので、使うことができなくなってしまいます。割れないように注意深く抜歯しようとしても、できない事もあります。後者も多くのの配慮にかかわらず避けられない事があり、やってみなくてはわかりません。

再植術は歯根尖切除が不可能な、第二大臼歯などに適用されます。抜歯するというリスクがあるので、本当に最後の最後の手段です。しかしどうせ抜歯になるのなら簡単に捨ててしまうのではなく、できる事なら良いところを選んで再利用しましょうという考えに私は賛成です。

以上のように、再植術の信頼性は実は今一歩です。だから通常は歯根尖切除術が優先されます。しかし歯根尖切除術は抜歯せずに感染源を除去しようというものですから、アプローチしやすい前歯や小臼歯では可能ですが、第二大臼歯ではまず不可能ですので、再植術は重要な選択肢となります。

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私は、歯を無理してまで保存する事には反対です。残しすぎて後で面倒なことになるケースは実はたくさんあります。そしてこの再植術は、無理な処置の一つと言って良いと思います。しかしどうせ抜いて捨てるなら、、、という割り切りなら良いと思います。

マスコミがインプラント批判をしたためか、無理をしてでも歯を保存しようという風潮があります。しかし何事も無理はいけません。無理なインプラントはいけませんが、無理な歯の保存もいけません。もちろん無理な入れ歯もだめです。

しかし無理ぜず安全策をとろうとすると、逆に患者さんが受け入れてくれないケースもかなりあり、私たちは良い意味での妥協点を求めいろいろなご提案をいたします。再根管治療はニーズが大きいにもかかわらず、良い結果をもたらす事が難しい分野です。しかし諦めるには早すぎるのも事実、チャレンジしてみる価値はあると思います。判断は非常に難しいですが。

私たちは可能性を信じて精一杯努力します。しかし結果がともなわないことももちろんあります。努力は保証できても、結果まで保証できない、それが医療の特殊性と言われています。理不尽と思われるかもしれませんが、それが現実です。ですから、このような面倒な治療をしなくてもすむよう過去を反省し、今あるその歯を将来同じような目にあわせない事、すなわち予防が何より大事です。

治療を通じ未来の自身について考える、その大切さが少しでもお解りいただければ嬉しいです。