2011年4月19日火曜日

被災地と歯ブラシ 誤嚥性肺炎を阻止しよう


阪神淡路大震災の時、震災後2ヶ月以内に死亡した震災関連死は922人だったそうです。そのうち肺炎による死亡が223人で、多くは高齢者で死因は誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)と推定されます。

誤嚥性肺炎は口の中の細菌が増殖し、それが喉に落ち肺にまで達して発症します。免疫力のない高齢者に頻発しますが、震災後の劣悪な環境や疲労がそれに追い打ちをかけます。

歯ブラシそのものも無いし、水不足でうがいもできません。もし阪神淡路大震災後に歯ブラシがあれば、223人のうちどれほどの方が救われたかと言われています。

そして新潟県中越地震、実はこの時はその教訓から直ちに被災地に歯ブラシが供給されたこともあり、震災関連死はたいへん少なかったのだそうです。

さてこの度の東日本大震災、神戸市は地震発生一週間後の3月18日に歯ブラシ11,000本を携えた職員を仙台市に派遣したのだそうです *1)。すばらしい!

その効果がどれほどのものであるかはまだ解りませんが、今後の報告に期待です。そしてこんな話を聞きました。某放送局のディレクターである患者さんが研修で教わった事です。

放送局勤務なので被災地ではどのように取材をするのかという履修があったのだそうです。その中に「取材現場滞在期間は必ず歯を磨くように」とあったのだそうです。衛生・健康上の理由以外にも、気分転換に大きな効果があるというのです。ナルホド!

普通の医療や介護の現場でもそうですが、避難所生活であるならなおさら歯の健康管理は後手に回ります。しかし先の誤嚥性肺炎の話のように、直接と言って良い程命に関わってきます。後始末がいかに大切かという事です。

まだあまり知られていませんが、口の中は人間の体の中で最も汚染されている所です。避難所での誤嚥性肺炎はもともとその要素が高かった方が、つまり普段ギリギリ発症していなかった方がまず発症します。

備えあれば憂いなしと言いますが、ふつう備えとは「モノ」と「カネ」としか考えないと思います。しかし実は「健康」もちゃんと備えをしておかなくてはなりません。私はこれを解りやすく「健康預金」と称しています。

次回のオープンセミナーはこれらについても詳しいお話をしたいと思います。ぜひご参加ください!

参考文献 *1)  広多勤 大震災と口腔ケア 日本歯科医師会雑誌  Vol.64 No.1 201-4 p29