2010年11月20日土曜日

ディズニーランドにある歯科医院とは!?

以前iSpotに掲載されていたこのコンテンツ、今ではリンク切れになっています。再掲載の希望がありましたので、まずここに掲載いたします。

なをこれは2002年6月に行われたWALT(世界レーザー治療学会)の時に書いた「無痛治療ってホントかな? 痛みを和らげる私達の挑戦」が原文で、それを短く編集したものです。原文はこちらからお読みいただけます。合わせてお読みいただければ幸いです。

さて皆さんは「無痛治療」って信じますか?そういう広告に私はまったく感心しません。

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ディズニーランドにある歯科医院とは!?


東京ディズニーランドの中に歯科医院があるのを知っていますか?入口からビッグサンダーマウンテンに向かうと、ウェスタンランド内で右側に看板を見つける事ができます。

その名を”Painless Dentist”つまり「痛くない歯医者」といい、Dr.I Teetheさんという方がやっておられます。痛くないのならぜひ行ってみたいと思うでしょうが、残念ながらそれはもちろん架空の歯科医院、遊園地内の偽装でした。期待を持たせてしまった方、ゴメンナサイ。


Painless=痛みがない マジックキングダムと言えどもこればっかりはかなわない、痛くない歯科治療は古今東西人々の夢である事に違いありません。さて痛みを少なくするために、現代医療はどこまで進んでいるのでしょう?

一番簡単なのが「表面麻酔」という塗薬です。塗るだけで効く~というほど都合が良い物ではありませんが、続く注射麻酔の痛みを和らげる力はあります。

でその注射麻酔ですが、この評判がよろしくない!しかしこれが無いと治療ができません。もちろん麻酔が効いてしまえば痛くないのですが、注射する時はまったく痛くないはずありません。ただその程度をやわらげる事はできます。

たとえば今の針、これはとっても細い!だから痛みが少ない。蚊が刺しても痛くないのは細いからです。もちろんそこまで細くはないのですが、日本の製造技術は素晴らしい。

それから表面麻酔の代りにレーザーを使う事もあります。半導体レーザというものがあって、これは昔から痛みの治療に用いられているほどですから、表面麻酔と同じかそれ以上の効果があります。これを誇大表現して「無痛」と言う人がおられますが、それはいくらなんでも言い過ぎです。しかしレーザは表面だけではなく深くまで効きますので、いつ注射麻酔が入ったかわからない方もおられます。

麻酔の入れ方も改善が進んでいます。歯科の麻酔はいろいろ理由があり、まるで握力計のようになっています。つまり30Kgくらいの圧力をかける場合があるのです。すると当然手は震え、それが痛みを助長します。そこで出てきたのが電動注射器。誰がやってもゆっくり静かに麻酔が入ります。この効果もけっこうあるようです。

もう一つ凄いのが鍼(針)。鍼麻酔って聞いた事ありますか?そこまできちんと効くわけではありませんが、例えば歯を抜いた後の麻酔が切れた後の痛み、鎮痛剤も完全ではありません。しかし事前に鍼を使っておくとけっこうな効果があります。ツボを押すだけでも効果があります。


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以上のように私達も様々な工夫をしているのですが、一つだけ大切な事があります。それは緊張しているとだめなのです。緊張状態だと痛くないものも痛く感じます。それから治療に消極的で、しかたがないからと諦め気分でいても同様です。

一方治療の必要性を理解し「私はこれから良くなるんだ」と前向きな人には、少々の痛みは何でもありません。ですから私達は患者さんに説明し、励まし、そこから得られる物語を造ります。実はこれが痛みをやわらげるために最も効果があるのです。それを省略していきなり治療に入るから「痛くされた・歯を抜かれた」とまるで強盗にでもあったかのような言い方をされてしまうのです。


きっとDr.I Teetheさんとは、患者さんを励まし未来を語るコミュニケーションの達人なのでしょう。だから”Painless”なのだと思います。もしかしたら故ウォルト・ディズニーは生前歯で苦労し、そのような名医にディズニーランドに出店して欲しいと思っていたのかもしれません。さて本当にディズニーランドで開業できるだけの力を持った先生は出てくるのでしょうか?