2009年2月28日土曜日

メインホームページの写真がケーキなワケ



にリニューアルしたメインホームページ、みなさんこのブログだけでなくそちらも見ていただけていますか?

で、そのトップビルボードには、なんと美味しいそうなチョコレートケーキがおごられています。みなさんビックリして言います、「いいんですか?ケーキなんか・・・」

なーんだ、みんな知ってるんじゃないですか、ケーキが歯をはじめ健康に良くない事を。けど好きですよね、食べますよね!?なぜですか?

歯科医院のホームページにあるまじきこのミスマッチ、いったいどういう事なのかをお話しましょう。



東京駅に直結する大丸東京店が新しくなったのは一昨年の11月でした。それまで地味な存在で素通りされる事が多かったこのデパートの大転換は、当時マスコミにも大きくとりあげられたものでした。

新装間もなく私も帰りがけに立ち寄ってみたところ、まぁビックリ!奇麗なのは当り前なのですが、既存のどこのデパートとも構造が違うではありませんか。

デパートとはたぶんどこに行っても、1階は化粧品売場と決まっています。ところがそれが無い!では何があるかと言うと、全部お菓子屋さんなんですね。いや「お菓子」なんてヤボな言い方はしません。すべては「Sweets」スイーツですよ、スイーツ!

なるほど、東京駅直結ですからお土産需要はたいせつです。そのおかげで化粧品は2階に追いやられてしまったのです。相当な反対があったと思われますが、関係者の英断は正しかったようです。

ちなみに私にとって東京駅は学会や講演のために良く使う駅です。吉田歯科診療室から東京駅までは歩いて15分。意外に近いんです。皆さん神田駅から歩いて来られますが、お散歩道としても良いコースです。

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高級店のパティシエが造る洋菓子を特にスイーツと呼んでいたのを、すべての菓子類をスイーツで括った菓子業界の戦略は素晴らしい。従来の子供じみた決して体に良くはないマイナスイメージが払拭され、それどころか「これを食べなくてはいけない!」という強烈なプラスのメッセージを発しています。同じ物でも呼び方一つでこうもイメージが変るものかと関心させられます。

聞くとところによるとお菓子、、、ではなくスイーツの原価はかなり高く、利益率は低いのだそうです。そこにテナントコストもあり、業界は薄利に頭を悩ませていたといいます。

だれがスイーツと言い出したかは知りませんが、そのおかげで雑誌の特集が頻繁に組まれたりし、ハイクラスのおもてなしとしてイメージアップはたいへんなものとなったのです。しかし、だ、、、

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誰が何と言おうとスイーツは菓子だ。歯はもちろん健康に良い事はあまりありません。しかしその社会的存在意義(固いな〜)は断固として存在するわけです。もしかしたらその価値は医療より高い所にあるかもしれないとさえ感じてしまいます。

人間は体に悪い事を楽しい・嬉しいと思うようにできています。菓子は文化として既に根付き、存在は否定できません。限度はあるが食べないわけにもいきません。ではどうする?

答えは簡単、自己防衛を徹底させれば良いのです。食べたカロリーはきちんと消費してください。解毒も何らかの形でしてください。そして歯は?そう、簡単です。きちんと磨けば良いのです。ただしほとんどの方は正しく磨けませんから、ぜひ磨いてもらってください

今の世の中、生きて行くのに必ずしも必要ではないものが高い評価を得ています。それを私は文化の負の側面と称し、いつも患者さんに説明しています。それらに翻弄されない賢い一個人となってくださいと言っています。その事に気がつかないと、せっかく治療した歯はまた大きなリスクにさらされます。

「食べるために生きる・生きるために食べる」ビルボードに加えた一文です。現代人はどちらかと言えば前者ではないかと思います。私はケーキを食べるなとは言いません。しかし食べてもいいが後を考えてくれ、自分にご褒美もたまには良いが、あまり甘やかさないでほしいと思うのです。つまりあのケーキには、実は世の中の間違いに気がついてほしいという、私のメッセージが入っているのです。

・・・・・のつもりなのですが、実はあのホームページを作製しているBiND for web life 2というソフトに最初から入っている画像をそのまま流用しただけだけなんです。デザイン的にとってもキャッチーだと思い採用しました。。。すみません。けど本当にスイーツには気をつけてくださいね!

2009年2月27日金曜日

歯根尖切除 vsインプラント 2

2月22日から続く

もちろん、なんでもかんでも歯根尖切除ができるわけではありません。できない場合もたくさんあります。以下、かんたんにまとめてみました。

1・器具が入らない場所はできません。

例えば上の第一大臼歯では根っこが3本ありますが、その中で外側の手前の根っこ(近心頬側根・きんしんきょうそくこん)はだいたいできるのですが、内側にある根っこ(口蓋根・こうがいこん)はできません。もう一本の外側の奥の根っこ(遠心頬側根)はできる場合もできない場合もあります。人によって位置・形が違うのです。

また上の奥歯でも第二大臼歯は奥すぎてできない方が多いです。

下の大臼歯はほとんどの場合できないと言って良いでしょう。それから根っこの形が特殊で複雑な場合もできません。

つまり歯根尖切除は器具が入り、鏡越しに顕微鏡で見ることができる場所、主に前歯〜小臼歯に適用されるものと考えた方が良いでしょう。

2・いろいろな理由で既に歯を支える骨が無くなっている場合はやめた方が良いでしょう。例えば歯周病が進んでいる場合、膿の袋(嚢胞・のうほう)がが大きくなりすぎている場合です。ただしこれはインプラントも難しい状態です。

3・歯根尖切除だけでは感染源を取りきれない場合も、もちろんできません。歯がすでに割れている場合などがそれにあたります。

4・それから、口がよく開かない方、これも器具が入りませんから、諦めてもらわなくてなりません。

ーーーーーというわけですね。なんでもかんでもできるわけではありません。素直に抜歯してインプラントにした方が良い場合もたくさんあるわけです。理屈は簡単で、ただ「感染源が除去できるかどうか」それだけです。全ての判断基準はこれです。

以上を勘案して、歯根尖切除とインプラントのどちらが将来性があるか、患者さんといっしょになって考える事が重要です。2月22日投稿の「インプラントを始める前に確認したい10項目」と合わせて検討しましょう。

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追記・・・・・・・・・・

先の「前歯2本を抜歯してインプラント」に対し、私がその方針を疑問に思った理由はもう一つあります。インプラントの問題点の一つに次のようなものがあるからです。それは、

2本のインプラントの間の歯肉は無くなる傾向にあり、
ポッカリと隙間が開きやすい

というものです。話しは難しいのですが、簡単に言うとインプラント周りの歯肉の構造が歯のそれとはまったく違うためにこうなります。

ポッカリあくというのは奥歯では我慢できますが、前歯ではカッコ悪いだけでなく、空気が漏れて発音が難しくなることもあります。管楽器を演奏する人に問題が出る事もあります。

そうならないような対策として、歯を抜くと同時にインプラントを入れましょうという方法が主流なわけです。しかしそれも施術から数年はだいじょうぶでしょうが、だんだん歯肉が萎縮して行き、前歯の真ん中がスカスカになる可能性が高くなります。

もし歯根尖切除で2本とも保存できていたなら、そのようなリスクは避けられます。また一本だけでも救う事ができたなら、それだけでもそうとうリスクが回避できるのです。

感染をどこまで除去し機能を維持できるのか、私達は数ある選択肢の中からその人を医学的・社会的・経済的に判断し、最良の方法は何かについていっしょに考える事が大切だと思っています。インプラントを選択する前に、この古くて新しい方法は見直されなくてはならない重要な技術だと断言します。

【予告】
吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニックは、インプラントだけを推進するものではありません。いろいろな可能性を常にあなたと一緒に考えて行きたいと思っています。

そこでさらにもう一つ、歯根尖切除もできない、けどインプラントもしたくないというあなたには、最後の最後の切り札(?)として、「移植」と「再植」という手が使えるかもしれません。

可能性としてはけっこう低く、積極的に薦める事は少ないのですが、その可能性についても機会を見てアップしていこうと思います。

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今後もこのBlogではメインホームページ掲載予定のコンテンツを前倒しでアップして行く予定です。お楽しみに!


2009年2月24日火曜日

「あれだけやっても傍流だった」って、それはそうだろう。

間が無くて申し訳ない、今は全部を書いている時間がありません。しかしこの記事は本当に面白い。


は私は日本の携帯電話に一言も二言もある人間です。基本的な通話品質やサービスをさしおいて、必要の無いものをどんどん押し付けて来た「ケータイ文化・日本」。その主要人物の心の内は実に興味深い。じっくり読んで後で私見を書いてみようと思います。

の記事はコンテンツビジネスに偏り、価値観が変貌した社会を物語っているようで本当に面白いです。物事を短絡的にしか考えられない人間を増やした、私の仕事の敵!?、あ、言い過ぎですね。けど、時流を造って来た男の裏側はやはり苦闘の連続ですね。皆様はどう思いますか?

2009年2月22日日曜日

歯根尖切除 vs インプラント

2月15日からの続きです。歯根尖切除に関する集中投稿の5本目。歯根尖切除とインプラントの使い分けについて、簡単にまとめましょう。


歯根尖切除(歯根端切除)は以下の場合に適用されます。

1・根管治療(歯内治療)を行いたくてもできない場合
  1. 大きく深い芯が入っていて、除去できない、あるいは危険な場合
  2. 除去可能だが、すでに自由診療による高価な冠が装着されており、除去したくない場合
2・根管治療(歯内治療)を行ったが、膿が止まらなく治癒の見込みがない場合

という事になります。2月8日の写真の方は1の両方の理由で歯根尖切除をする事になったものです。すなわち、すでにメタルボンドと呼ばれる自由診療による白いきれいな冠が入っている事と、レントゲンを見るとけっこうしっかり金属の芯が入っており、無理に除去しようとすると歯そのものが割れてしまう危険性が高いといいう事です

インプラントを始める前に確認したい10項目

この休日もメインホームページ用のコンテンツ作製に取り組んでいますが、やはりブログはレイアウトを気にしないでポンポンアップできるので楽ですね。朝ご飯を食べながらメモしていた事をまとめて先にこちらにアップしました。



インプラントを始める前に確認したい10項目

1・抜歯してインプラントにしましょうと言われた方へ。本当に抜歯しなくてはならないのか、きちんと説明を受けましたか?なぜ歯を保存できないのか、また無理に保存するとどのような不都合が発生するのかを確認しましょう。もしその先生が歯の保存に詳しくないのであれば、必ずセカンドオピニオンをとるために他の先生を紹介してもらいましょう。

2・インプラント以外の方法について説明を受けましたか?入れ歯やブリッジのメリット・デメリットを知っておきましょう。

3・歯型の模型・レントゲン・CTなどの資料を見せてもらい説明を受けましたか?

4・血液検査や血圧測定などの内科的な検査を受けましたか?特に糖尿病関係の検査は大切です。また現在内科などから出されている薬や、個人的に購入している薬・健康補助剤・漢方薬などを主治医に正しく報告しましたか?

5・手術方法や材料について説明を受けましたか?インプラント手術にはいろいろな方法がありますが、それぞれ特徴があります。なぜそのような方法を用いるのか知っておきましょう。また使われるインプラントはどのような物か、できたら現物を見せてもらいましょう。

6・インプラントを含め、歯や口全体の現況やメンテナンスについてお聞きになりましたか?必ず歯科衛生士から正しい歯ブラシの方法を習い、きちんとできるようになってからインプラント治療を始めましょう。特に歯周病で歯を失った方はインプラントの感染率が高いので要注意です。

7・治療の見積・進行予定表をもらい、同意書をとりかわしましたか?インプラント治療は時間がかかったり、後で予定変更がでたり複雑になる可能性があります。言った言わないがないように、きちんと書面で確認しましょう。

8・先生やスタッフは信頼でき、何でも話せる関係になっていますか?

9・インプラントに限った事ではありませんが、その成功率は100%ではありません。もしインプラントが骨とくっつかないなどの不都合が出た場合どうなるかをお聞きになりましたか?もう一度できるのか、だれが再治療をするのか、それはその歯科医院で対処できるのか、大学病院を紹介してもらうのかなども聞いておきましょう。失敗は考えてたくありませんが、その備えをしておく事は失敗を防ぐ意味でもとても重要です。

10・以上のような事をきちんと聞いて、考える時間を十分とりましたか?

***

こんな事を書くのは、もちろん現状これらが十分行われているとは言い難いからです。インプラントの講習会に行っても多くは技術論に終始し、患者さんにどのようにアプローチするのかは個人の判断にゆだねられています。つまりあまり重要ではないと思われているようです。だから私は歯科医療は、特にインプラント治療は未だに世の中のコンセンサスを得られていないのだと思うのです。どんなに優れた技術も、表現力を持たなければ無意味です。

それから以上のような説明は面倒だからいらないとお考えの方がおられるなら、その方はインプラント治療をしてはいけません。

以上はもう少しきれいにまとめ、メインホームページにアップする事にしています。


2009年2月21日土曜日

I want to be a Dentist.(←?)

Grand Funk Railroad なんて書いたら歳がばれてしまいますが、この70年代を代表するアメリンロックバンドのCDが今私の手元にあります。

「Caught In The Act」、1975年のライブですからもう30年以上も前の音源です。この金曜日、私はたった¥1,796で感激と不思議(後述)を買ってしまいました。


事は金曜日の朝、なぜかわかりませんが頭の中を、とあるベースのリフが走りました。曲は"Black Licorice"、ドラムから入るこの曲はその特徴的なベースラインに続いて、今思えばずいぶんと軽めの歪みを効かせたギターのカッティングが入ります。

中判のオルガンソロが美しく、ドスがきいた粗削りな音造りとのコントラストが絶妙で、そのわけのわからないパワーに押されながらフォーク少年だった私はしだいにロック少年に変わって行ったのです。

この曲はレコードではなくNHK-FMで聞いて知ったのですが、さすがにアルバム全曲などとはいかず、美味しいところだけを選んで放送します。"Black Licorice"から哀愁漂う"The Railroad"、全米1位に輝いた"We're An American Band"、テンションコードを効かせた"T.N.U.C"と、このライブの最も盛り上がった所を選んでます。

私はこの時始めて「ロックってカッコいいなぁ」と思い、その録音を繰り返し聞き続けていたものでした。発売から何年か経った高校一年の頃です。

その曲がなぜ今頭をよぎったのかは、脳科学者の茂木健一郎さんもわからないでしょう。いったいこの曲は何だったのだか、私は朝の7時に突然コンピュータを開き検索を始めました。

私は古くからのファンの曲評ページを期待していたのですが、まず引っかかってきたのはAmazonでした。で開いてみると、何と視聴ができるではありませんか。私は恐る恐る"Black Licorice"をクリックしました。

2秒後にスピーカーから流れてきたそれは、まぎれもなく10分前に私の頭の中を走った、そして30年以上前に聴いたあのイントロでした。40秒ほどの視聴を何回も聞直し、次の曲も、次の次の曲も、朝のバタバタの時間を気にせずに聞き入ってしまったのです。


さてここで一つ気がついた事がありました。それは'~~~American Band"の直前に入っている、子供らしき声です。そう言やそうだった、確かにこんな声が入っていたな、しかしライブなのに変だな?と。

そして何といっているのだろう?良く聴くと一部だけは聞き取れます。それは、

  I want to be a Cowboy,
  I want to be a Dentist.(←?)
  I want to be a Rock'n Roll !

そして1,2,3,4, の掛け声とともに"~~~American Band"が始まり、ライブは最高潮に達します。ロックらしい5度和音のギターリフが印象的なこの曲は単純にカッコよく、当時どこの高校の文化祭に行ってもコピーバンドの定番としてとりあげられていました。

それはそうと、これは何度聴いても"Dentist"です。いったいどういうことなのでしょう?私は迷わず購入ボタンを押しました。そしてその日の夕方にはもうCDが届きました。



診療が終わり、一人になった診療室で、いつも診療中にインターネットラジオを流しっぱなしにしているコンピューターにCDを入れました。まだ聴いた事がなかった1曲目が始まります。しだいに私の頭は高校一年生に戻って行きます。そして朝方突如頭をかけぬけたベースラインが流れます。涙がでてきます。

そして"I want to be a Dentist"。やはり私には何度聴いても Dentist としか聴こえません。間違っているかもしれませんが、Dentist にしておきましょう。前後に何と言っているのかは私の語学力では聞き取れませんが、たぶんRock'n Rollが一番したいと言っているのでしょう。

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私は今、Dentistをしています。高一の私には想像もつかなかった事をしています。朝方頭を走ったベースライン、そして今気がついた"I want to be a Dentist"とは?

もしかしたらあの時に自分は歯科医師に運命づけられたような、そしてRock'n Rollと同じくらい大好きなDentistという仕事、それに気がつけと神にでも言われたような気がするのです。まぁそういう事にしようと勝手に心に決めたのでした。

時は2月20日、吉田歯科診療室12回目の開設記念日でした。

・・・だけどやっぱり"Dentist"でなかったどうしよう〜!誰かおしえてください〜。。。

ビニール傘に見える造り手の思い?

皆さんはあの透明なビニール傘、何本お持ちですか?私の所には常時2~3本はあります。突然雨の時、患者さんにあげられるように置いてある、、、というのはウソで、どうしても溜まって行くんですね、これが。

しかし造りがあんな物ですから、そんなに何回も使える物ではありません。壊れては捨て、突然の雨にコンビニに駆け込み、また壊れの連続、年間5~6本は買っているような気がします。エコな時代にこれはいけないとは思うのですが、荷物を持つのが嫌いな自称「手ブラ派」の私に、ビニール傘は必需品です。

さて傘にも大きさがいろいろありますが、ビニール傘とはずいぶんと小さかったと思います。しかし何年か前から少し大きめのものが増えてきました。

私にとって傘の大きさとはさした時ではなく、たたんで電車にのる時こそ重要です。普通の傘は長すぎで、普通に持つならともかく、満員電車では手を曲げられないので柄ではなくシート部分を持たなくてなりません。これは冷たいし不快です。

一方ビニール傘は短すぎで床に付きませんでした。これは意外に不安定で、先端が人混みにまぎれていってしまいます。

雨の日の満員電車はたいへんです。傘がズボンに着いて濡れたり、ひどい時は他人の傘が私の靴と足の間に入り、身動きできないまま雨が靴の中に流れ込むという 最悪の事もありました。しかしたぶん私も傘で他人にずいぶん迷惑をかけてきたのだとろう思います。ま、これはお互い様ですが。。。

ところがここの所普及してきた少し大きめのビニール傘ですが、これは長からず短からずで非常によろしい。身長171cmの私がたたんだで普通に柄を持つと、自然に先端が床に付く。これは絶妙だ!

見ると白い柄には[65cm]とわざわざステッカーが貼ってある。造ったのはよほど使い手を意識した人と予想してしまいます。


それにしてもこんな小さな事にいちいち関心してしまうのは何故なんだろうと、満員電車に揺られながらしばし考えてみました。

私達はものすごい多くのモノに囲まれて生きています。家電などは「こんなもの要るのか?」という機能がテンコモリで、造っている人は一生懸命なのかもしれないが、何かいらない努力を強いられているような気がして、私とはどうも違う感覚だなと日頃から思っていました。しかしこのわずか315円のビニール傘はどうでしょう。私の単なる思い込みでしょうが、それでも造り手の気持ちが伝わってきます。

もちろん身長や手の長さで傘の長さを変えるわけには行きません。満員電車の中の事でもなければ、私も傘の大きさ(長さ)ごときにこだわりはしません。

しかし成熟商品であるものが、実はまだ改善の余地があった事に気付かされると「ヤラレタ」と思わず笑ってしまいます。逆にハイテク商品などがこれでもかと機能を詰め込んでくると、私のような自然科学系の人間はしらけてしまうのです。私はハイテクも限定で使いはしますが、やはりローテクが好きなようです。皆さんはいかがですか?

PS:ローテクと言えば、2Lのペットボトルの中腹に指がピタッと入る窪みが付いた時、これも感動でしたね。発案した人に会いたいものです。

2009年2月15日日曜日

なぜ歯根尖切除の話をしているのかというと...2

2月9日よりつづく〜
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その先生の答えはこうでした。

「私は歯根尖切除の経験が少ないので、インプラントを選択しました」

う〜む、これはどうでしょう?この先生は実は顕微鏡をお持ちですし、手術も確かなようですので、歯根尖切除ができないはずはないのですが。患者さんの事を考えたら、まず歯根尖切除の可能性を考えるべきだと思います。もし自分でできないのであれば、大学病院などに紹介すれば良いのです。診断してもらい、それでだめなら初めてインプラントにするべきです。彼はなぜそれをしなかったのでしょう?

これは私の想像ですが、この先生の頭の中には最初から歯根尖切除の選択肢は無かったと思います。ちょうど発表用に最適なインプラント症例が造れる患者さんがこられたので、喜んで手術をしたように聞こえました。もちろんリスクをおかしてまで根管治療をする気もなかったでしょうし、インプラントの技術はあっても根管治療はあまり得意ではなかったのかもしれません。

当時はちょうど、前歯のインプラントを審美的に行う事が重要と言われてからしばらくたった頃でした。今でこそあたりまえですが、だれもがそのような手術をしたいと思い始めた時期です。

歯科医療界とは不思議な所で、ある程度仕事ができるようになると「何のため・誰のため」に診療をしているのかが解らなくなってくる人が増えてきます。どういう事かと言うと、患者さんのために診療をしているのではなく、発表用の症例を造るために診療をする人が出てくるのです。悪く言えば、学会や研修会でかっこをつけたいのです。

間違えないでいただきたいのですが、症例を造る事は良い事です。それを他の歯科医師と共有する事は、医療技術の進歩にかかせないことです。しかしすべては「患者さんのために」という思いがベースになくてはいけません。私はそれが今の歯科医療界にどれほどあるのかが疑問なのです。

歯根尖切除は保険診療に収載されてはいますが、たしかに成功率が低く、評価されている医療技術とは言えません。成功率をあげようとすると設備投資や人件費が大幅に増え、簡単には実行できません。しかし前述の先生は顕微鏡をお持ちにもかかわらず、選択肢の一つとして考えてもいただけなかったようです。なぜこうもインプラントをしたがるのでしょう?

実はそこには経営的な問題もあるのです。健康保険による基本的な医療技術がまるで評価されず、赤字が避けられない状況の中、インプラントはまるで経営の救世主のごとく歯科界に現れました。その結果、不採算な保険診療を切捨て、いきなりインプラント治療に特化しようとする歯科医院が増えているのです。基本的な歯科技術の向上を考えず、保存できる歯まで抜歯してインプラントにしてしまう同業者が増えているという事です。

同業批判はとても悲しい事なのですが、そろそろ放っておけない時期になったようです。救える歯はもっとある、歯根尖切除をするたびにそう思うのです。

次回は「歯根尖切除 vs インプラント」と題して、どのように使い分けるべきかをお話しようと思います。

2009年2月9日月曜日

なぜ歯根尖切除の話をしているのかというと...

なぜ歯根尖切除の話をしているのかというと、今年に入って急に症例数が増えている事もあるのですが、前々から思っていた事があってのことなのです。以下が主な理由です。

2〜3年前、とあるインプラントの研修会に行った時の事です。こういう研修では講師の先生が自分が行った治療をスライドに写し、いろいろな考察を加えてゆきます。

その時に出てきた症例は、上の前歯2本を抜歯し、すぐにインプラントを埋入したというものでした。抜歯してすぐ埋入というのは前歯ではよくやる事で、こうすると歯肉の形が歯があった時代とほぼ同じ形で存続できるため、見た目や使いこごちがたいへん優れています。

それは良いのですが、問題は「その歯は本当に2本とも抜歯しなくてはならなかったのか」という事です。スライドを見る限りでは、歯根尖切除で十分対応ができそうです。そこで私は講師の先生に質問してみたのです。「歯根尖切除はできなかったのですか?」と。

2009年2月8日日曜日

歯根尖切除・インプラントにしない選択肢 2

歯根尖切除、名前からして怖そうですみません。医学用語とはこういうもので、読んで次の如くの「そのままやんけ」の名称です。あ、別名「歯根端切除」ともいいます。まったく同じです。

前文のとおりこれはとっても有効な治療方法で、歯を残す最後の切り札となりえます。もっと見直されなくてはならないです。簡単にレントゲンでご説明いたしましょう。

[1]

根っこの先端が黒く写っているのがご覧いただけると思います。この歯を治療するには冠を外し、さらに深く入っている金属の芯を外さなくてはなりません。芯を外すのにはけっこうなリスクが伴います。外す時の力で歯自体が割れてしまう可能性があるからです。

その前に被っている冠を外さなくてはなりませんが、自由診療の白い歯が入っているために、患者さんは外したくないとおっしゃいます。冠と芯、そしてその先の天然ゴム(レントゲンでは先端部に白く細く写っているもの)が完全に外せれば、やりかたしだいでは治ってくれるかもしれません。チャレンジしてみる価値はあります。しかしそれにし てもリスクは高いです。腫れも痛みも出ていますので、迷っている時間はありません。

「外してみるが、もし割れたら即インプラント」という選択肢があります。インプラントをやりたがる先生は、この方法を強く勧める傾向にあります。しかし私は違います。このレントゲンを見る限りでは「歯根尖切除」は充分適用です。

**
というわけで2月2日の投稿のような事をするわけです。結果はこれです。
↓ ↓ ↓
[2]

鍵は感染源の徹底除去と切断面の封鎖です。約一年後のレントゲンはこれです。
↓ ↓ ↓
[3]

レントゲンの撮影方法が違うので一概に比較はできないかもしれませんが、[1]に比べて[3]は病巣が小さくなっているように見えます。正確に言うと病巣が写っているわけではなく、病巣が小さくなった結果、骨が再生しているのが解るわけです。

「なんだ、全部消えるわけじゃないんだ!?」とお思いでしょうが、実はこの黒い部分は病巣が無くなっても写ります。理由は骨の外側(皮質骨って言います)が元通りに再生するのにはかなりの時間がかかるからです。レントゲンで骨が白く網目状に見えるのは、実はこの皮質骨が写っているからです。内部の柔らかい部分(海綿骨って言います)はほとんど反映されません。ですから[1]の黒い病巣は、実はレントゲンに写るより、ずっと大きいのです。これも発見が遅れる理由になります。

最近は歯科用のCTが普及してきましたので、これらの診断はかなり簡単になりました。良い時代になったものです。

さてなんでこの「歯根尖切除」の話題をとりあげたのか、理由は次回のオタノシミに。


2009年2月2日月曜日

歯根尖切除・インプラントにしない選択肢

今年に入って「歯根尖切除」という処置が増えています。今日で4人目になりますが、例年になくハイペースです。

この方法は歯内治療が不可能な場合の最後の切り札として、良く知られた治療です。

根っこの先端に感染源があり、それが普通の歯内治療ではどうしても除去できない場合、普通は抜歯になります。

抜歯になったらその後はブリッジなりインプラントなりを考えなくてはなりません。しかし、できればそうはしたくないという方のために、この「歯根尖切除」はもっと普及して良い技術だと思います。

具体的には、まあ確かに手術にはなるのですが、歯肉を切り(怖がらないでくださいね〜)、骨の中から根っこの先端を露出させます。たいていは嚢胞(のうほう)というオデキのようなものがあるので露出は難しくはありません。

根っこの先端が出てきたらその周囲が感染源ですので、その部分を切って、切断面を特殊なセメントで塞ぎます。

こう書くと簡単(?)かもしれませんが、実はこれがとても難しい。まず普通の器具では根っこの先端を切ろうとしても、機械が入って行きません。ちょっと特殊な超音波器具が必要です。

切った断面を見るためにとても小さな鏡を使うのですが、これは顕微鏡を使わないと見えません。

セメントで塞ぐと行っても、簡単には入って行きません。顕微鏡で良く見て、アシスタントとタイミングを合わせてやらないと塞げません。

そう、そのアシスタントも2名(できれば3名)必要ですし、所要時間も1時間以上必要であるとか、ハードルがけっこう高いのです。手術自体はインプラントと同程度のレベルが必要になります。

先にも書いた通り、この歯根尖切除は歯科医師であれば誰でも知っている治療方法であるにもかかわらず、あまり普及していません。理由は手術の難しさと成功率の低さです。

しかし以上のような方法をとれば、成功率が90%以上であることがわかっています。抜歯を決断する前にぜひとも検討してほしい方法です。