2016年8月27日土曜日

フロスの効果に疑問の余地はない

「フロスの効果は科学的に十分証明されていない」という主旨の記事が掲載され、波紋を呼んでいます。
科学的に証明されていない? 歯と歯の間をお掃除するデンタルフロス、本当にやる意味はあるのか? 原文 GIZMODO CareNet
とても面白い記事で興味深く読まさせていただきました。なんでも科学的根拠がなければ信じない、いわゆる「エビデンス病」の人が書いた記事か?と思いましたが、よく考えてみたら今まで「どのようにフロスを使えば良いのか」という部分が考慮されていませんでしたので、効果が疑わしいと言われてもしかたがないかもしれません。

フロスの正しい使い方は、決してよく知れ渡っているものではありません。入れた後どう動かせば良いのか」という話は、私もほとんど聞いたことがありません。だいたい皆さん、入れて取り出すだけで精一杯、けっこう難しいんです。



この動画は私が2008年にアップしたものですが、1:00のところからフロスが登場します。このように「引きつけて上下に動かす」その後「押し付けてから上下に動かす」とやらないと、効果は限定的です。

単に入れて出すだけでも効果はぜんぜんあるのですが、上記のようにやらないことには、統計に現れるくらいのはっきりした結果にはならないと思います。

それにしても、普通に歯ブラシをした後でもフロスを入れてとり出したものを見れば、だれもがかなりのプラークが付いてくることに気づきます。

プラークの悪影響にはエビデンスがありますから、これだけ明らかなものに対し「効果は疑問」というのはどうでしょう。逆に言えば、当たり前すぎて研究するのもバカらしいとも言えそうです。

いずれにしても、フロスの効果に疑問の余地はありません。皆さんも是非、歯科衛生士がいる歯科医院で、正しいフロスの動かし方を確認してもらいましょう。

2016年8月12日金曜日

今年の前半戦が終了


今年の前半戦が終わり、プチ打ち上げです。みんなよく仕事をしました。

来週一週間はお休みをいただき、その間は設備更新やウェブの更新・原稿執筆などに使わせていただき、8月22日(月)より診療を開始いたします。

皆様も良い夏休みをお過ごし下さい。

2016年8月4日木曜日

予防はなぜ定着しないのか?


分かりきっていることほど実行できないもの、「予防」はその典型ではないでしょうか?

予め防ぐ、だからから「予防」と言います。予防が大切・予防に勝る治療はない・これからは予防の時代だ、日本歯科医師会でも「予防さん」というユルキャラを前面に出して予防のキャンペーンをしています(あんまり可愛くないのですが、努力は認めます…)。

しかし予防を前面に出したものの一向に定着しない、このような悩みを持つ歯科医院がほとんどだと思います。うまくいっているように見える所でも、実は独立採算としては成り立たっておらず、一般治療やその先生の講演料などで赤字を埋めているのが現状のようです。

予防はなぜ難しく、定着しないのでしょう?原因はいろいろあるとは思いますが、患者さんにしてみれば(本当はもう「患者」ではないのですが、ここでは便宜上患者とします)以下の事が考えられます。
  1. 痛くなってから歯医者に行っても間に合うと思っている
  2. 病気が発覚してから治す方が楽だ
  3. 予防にコストをかけるよりも悪くなってから健康保険で治療した方が低コスト
  4. もしかしたら予防なんてしなくても済むのではないかと思ってる
  5. 予防意識がそもそもない
とまぁ、当たり前といえばその通りです。一方歯科医院では、
  1. 健康保険での評価が低く、制度の縛りが多く使いにくい
  2. やる気のある歯科衛生士の雇用が難しい
  3. 保険診療継続期間中に自費で徴収するのは混合診療になる
  4. 予防を一生懸命やっても補綴(人工物)の寿命はたいして変わらないかも
  5. 病気が減ると困る歯医者がいる
などいろいろ考えられます。しかし以上はどれも表面的な事で、根本はこういうことではないでしょうか。

すなわち予防とは、まだ自覚症状がない状態で新たな行動を促すものです。しかし自覚がない事には人の心は動きません。たとえ脅してやっても長続きはしません。

私たち専門家から見れば、この先明らかに悪くなるだろうという事が解ります。それは予想でも占いでもなく、例えば顕微鏡からの画像をお見せすれば一応は理解してもらえます。しかし問題はそこからで、患者さんに危機感はないので、できれば避けたいと思うでしょう。いつになったら歯医者通いが終わるのかと怒る方もいるそうです。

結局予防を続けてもらえるのは、歯科医療の信頼力しだいと思うのです。この人の言う事なら信じてみようという、良い意味での詐欺的要素がどんな営業にも必要で、医療も例外ではありません。しかし今の日本の歯科界にはその力が決定的に不足している、個々の医療機関での裁量権がほとんど認められないからです。

そのためには院長が自分の考えをしっかりもち、スタッフが共鳴し、全員がそれを継続して発信し続ける力が必要だと思います。しかし残念ながらそれは健康保健制度の流れの中では混合診療の問題があり、意欲は削がれてしまいます。

歯の病気の予防が国力をアップさせることは間違いありません。そのためにも多くの歯科医院が健康保険制度から離れ、治療中から予防を徹底させるシステムに移行すべきと思います。これは私たちが保健医療機関を辞退した一番大きな理由です。


新しい iPhone はジャーナリストを喜ばすための道具なのか?



毎年この時期になると、次のiPhoneの噂が聞こえてきます。秘密主義のappleといえども、中国の工場群を完全にコントロールできるわけではなく、部品などの流出画像がネットにアップされて行きます。

過去の例に倣うと今年は iPhone7 になるところですが、噂系サイトによると 7 は来年の登場で、今年は6SE になるだろうと報じています。外観がほとんど変わらないので7を名乗るには役不足という判断なのかもしれません。

もちろん中身は大幅な進化があるでしょうが、それでは期待外れと嘆く人達がいます。それがジャーナリズムです。

噂どおり新型iPhoneが発売されるなら、IT系ジャーナリト達はこぞって以下のように発信するでしょう。

  • appleはもうだめだ
  • appleにイノベーションは起こせない
  • 株価の低下はappleのせいだ

しかしいったい誰が毎年新しいiPhone を出すと約束したのでしょう?どこかで(主に日本)新しい技術の新しい部品が生まれ、それを大量買いして付加価値をつけて市場に流す、これがapple のビジネスモデルです。新しいパネルや電池を造っているわけではありません。なのになぜ彼らはappleを標的にするのでしょう。

結局彼らは新しいっぽい機器や仕組みが出てこない事には、売れる記事が書けないのだと思います。また進化は無限に続くものと思い違いをしているのでしょう。iPhone登場から今日までのワクワク感に便乗し、それをいつまでも期待している。表面的な変化が止まった時、その腹いせにネガティブな記事を書く、以前もそのような事がありました。

毎年出る新製品に踊らされるのは使い捨て文化に慣れ親しんだ日本人だけと思っていたのですが、ITの出現で世界中がそうなってしまったかのようです。

「良いものを時間をかけて作り上げ、丁寧にメンテナンスしながら長く使う」私は仕事上このようなコンセプトを持って診療をしているのですが、ニュースなどを見ていると産業界はそれとは対極にあるのだなとよく思います。

もちろん完全個別対応の小規模医療機関と、グローバルな大量生産企業との比較は乱暴ですが、しかし私は人々の心が非常に短絡的で結果を早く求めすぎる方向に急速にシフトしているのを懸念しています。歯科医療の現場でも結果を早く出したがり、中途半端を繰り返す人が多いのと無関係ではないような気がします。

技術が進化するのは当然でありがたいものですが、数年前のものを陳腐化させ使い捨てを推奨するようなビジネスはどうでしょう。そしてそのような文化を煽り、コバンザメのように振る舞うジャーナリズムにはいつも違和感を覚えます。

人はいつも自分が進化し続けられるものと勘違いをしています。経済も成長し続けなくてはならないという幻想に取り憑かれています。確かに進化ができなくなれば、他の産業国にやられてしまうという危機感はありますが、ジャーナリズムは現状批判だけでなく、ソフトなどへのリソース転換を促す論評をもっと出すべきだと思います。つまり表面的な進化の論評だけではなく、中身の進化にもフォーカスするべきです。

それにより開発に伴う苦労や感動が世に知られ、働く人の励みとなり、そこに続く人の期待感を高められる、産業界を活性化させるエネルギーとなる記事を書くことこそ彼らの仕事になるべきです。

しかしもし、そんな記事は売れないという事であるならば、悪循環を助長するたいへん嘆かわしい時代と言わざるをえません。

さて、私は2年前のiPhone6を使っていますが、性能に全く不満はありません。バッテリーの疲労も少なく、ポケモンGoをやるわけではないので、まだまだそのまま使えそうです。

私にできることと言えば、良いものを長く使うことの大切さを歯科医療を通じて発信して行く事です。しかし時代は本当に刹那的になりましたね。

2016年8月3日水曜日

「治った・治ってない」は誰が決める!?

病気は何をもってして「治った」「これでOK」と言えるのでしょう?

実はコレ、誤解が非常に多く、特に歯科医療の現場では混乱の一因となっています。にもかかわらずあまり話題になることがないので、ちょっと書いてみます。


たとえばカゼをひいて頭が痛いとき、会社を休み内科に行って薬をもらってきます。それを飲んでしばらくおとなしくしていれば、痛みも取れてまた会社に行けるようになったとします。痛みがなくなればもう内科に行く必要はありません…というのが普通だし、一番よくあるパターンだと思います。

ほとんどの方は病気というものはこういうものだと思っており、「治った」と判断するのは自分です。治ったかどうか確認するために「また来てくださいね」とはなかなか言われません。頭痛が解決していればそれで良いのです。

しかし歯科の場合は、そういうわけにはまいりません。

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たとえばムシ歯で神経が感染し、痛くてどうしようもないので神経を取らなくてはならなくなったとします。神経をとれば、一応は痛みはなくなります。しかし、これをカゼと同様に「治った」と勝手に判断し、来なくなってしまう患者さんが普通におられます。

初日は神経を取るだけで時間がきてしまうことがほとんどです。後日、もっと丁寧にお掃除をし、中を詰め、最終的には人工物で歯の形を復元しなくてはなりません。

その治療と併行して、そもそも悪くなってしまった原因を、すなわち「歯が磨けてなかった」という事実を改善していくように練習をし、人工物が長く使えるような人に変っていただかねばなりません。再発予防です。

ここで面倒くさい!と思われた方は、残念ですが解決のチャンスを自ら放棄し、将来歯を失い続けるサイクルに入ることになります(←キビシイけど現実!)。

歯周病もまったく同じですが、こちらは自覚症状がない場合がほとんどなので、急性で痛みがあるとき以外は「別に痛くないから」と、歯科医院からの忠告を無視して治療が中断になるのも普通の話です。

そのうち勝手に「治ってる」と自分にだけ都合が良い判断にすり替えてしまう、これも普通です。

しかし原因が解決していませんから、再発悪化を繰り返します。

歯周病の場合、原因とは何でしょう?一般的には「歯石」が付いているのが原因なので、それさえ取ってもらえばだいじょぶと判断する人が多いのではないでしょうか。しかしこれは大きな間違いです。歯石は原因ではありません。

歯周病の原因は「細菌感染」と、それに対する「免疫」の問題です。歯石はゴツゴツしているので細菌が絡みやすくなるだけで、本来病原性はありません。たしかに歯石をとれば病原菌の数は減りますが、ゼロにはなりません。それでも残った細菌の影響をなお強く受ける方は多く、また一度減った細菌数がそのまま安定し続けることはありえません。細菌検査などで、再発の兆候を未然に把握する必要があります。

以上のように、歯科の場合は「治った・治ってない」の自己判断はほとんどできません。しかし多くの方がカゼと同様の判断をしがちになってしまいます。病院にはできるだけ行きたくないという気持ちも強く働いているのも間違いないでしょう。

患者さんとは本来弱者であるわけですが、なにも考えないのも困ります。歯界医院の指導力不足もありますが、指導に時間が割けないような制度の欠陥を放置し続けている行政こそ問題です。

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ムシ歯は決して「治る」わけではありません。悪くなった部分を精密に削り取り、人工物で補うことを、なぜか「治る」と言われます。健康保険用語ではりっぱに「治癒」と表記します。もちろんこれはケガや病気が治るのとはワケが違います。

一部の人が「ムシ歯は削らずに再石灰化で治すもの」と豪語していますが、それは目に見えない程の初期のごく小さなムシ歯のことで、この誤報に現場はたいへん迷惑しています。

同様に歯周病も初期の歯肉炎の段階なら治りますが、骨や歯肉が大きく欠損してしまった場合は、一部再生はあるものの100%元通りになることはありません。多くの場合は歯周病の炎症が解決して「進行が止まる」ことを「治る」と言っています。これも皆さんが考える「治る」とは程遠い状態なのではないでしょうか。

もちろん医科でも患者さんが勝手な自己判断で治療を中断してしまい、たいへんな事になる例で溢れています。糖尿病を放置してしまう人などはよく知られた事ですし、結核の治療を勝手に中断し、きちんと薬を飲まなかったために耐性菌を造ってしまうなど、取り返しがつかないだけでなく、周囲にとんでもない迷惑をかけてしまうことが頻繁にあるわけです。

ということで「治った・治ってない」は、患者さんが決められる事ではありません。また治ったにしても、その後に続く予防が徹底されていないと、再発は簡単におきます。再発後はカゼのように元に戻るものではなく、もっとひどい結果として帰ってきます。それが歯を失う大きな原因です。みなさん、チェックは信用の置ける医療機関で、きちんとしてもらってくださいね!


赤いスケッチブック


私が診療室で何かの説明する時に持ってくるのがこの赤いスケッチブック、正しくはクロッキー帳というものです。もう20年近く同じ製品を使っているのは、赤い表紙がとっても気にっているからです。

クロッキー帳とは、デザイナーさんがササっと下絵を描く時に良く使うものですが、説明用にも適した紙質で淡い黄色がイイ感じです。

本当はデッサン用の極太芯の鉛筆を使って書いていたのですが、在庫切れで今は普通にボールペンです。それでも味わい深い感じです。

一時はiPadと専用ペンにしようとも思いましたが、やはりコチラのの方がいいです。こういう部分はアナログですね。

これに書いた説明は切り取って差し上げることもあるのですが、こうして残っているものもたくさんあります。各診療室に一冊ずつ置いてあるのですが、Room-Aのそれが一杯になったので、新しいものを出してきました。

それにしても過去の説明を見ているとけっこう面白いもので、難しい方法を説明していた時は絵も思いっきり増えてしまいます。

残念なのは、せっかく説明で書いたのに、それを渡そうとしても拒否される方。ヘタクソな絵かもしれませんが、きちんと持って帰って将来のことを考えてもらいたいものです。

一方で持って帰った方はそれを見て考えて、次回には新しい質問があり、もっと良い方法が見つかったりします。

患者さんが前向きに考える力を持った時、私たちももっと頑張ろうと思います。写真やレントゲンなども大事ですが、こういう情報もぜひご活用いただきたいと思っています。




2016年8月2日火曜日

ノーリスク・ハイリターン !?


そんなこと有りえない、騙されないぞ!? いやいや、投資の話ではありません。

ローリスクでローリターンか、ハイリスクでハイリターンか、常識的には世の中それしかないはずです。

しかし私たちは毎日患者さんに、ノーリスク・ハイリターンのテクニックをお教えしています。それが「歯磨き」です。

物事にはリスクはつきものですが、それによるリターンをどれくらい見込むかで、人々の行動は変わります。

歯磨きによるリターンは計りしれません。単純に虫歯や歯周病にならないという事は、生涯医療費の大幅な節減になります。それは歯にかかるお金だけでなく、他の病気の予防もできることが良く知られています。

ではリスクは?歯ブラシ一本に投資する金額ですか?磨いて歯が擦り減ることですか?1日10分の所要時間ですか?

たったこれだけの事をリスクと言う人がいるならば、その方はノーリスク・ノーリターンの人生を送っているのでしょう。

歯磨きはノーリスク・ハイリターンではありますが、100%自力で磨けるわけではありません。そこはちょっと専門家に任せていただきたいところではあります。

しかしあなたが炭水化物をほとんど食べないで済ませられるならば、プラークは付かず、歯石もわずか、バリバリの健康になり、歯ブラシはもっと簡単に済ますことができます。リターンは高配当となり、老後も安心!こんな詐欺のようなうまい話が他にあるでしょうか?

健康のヒントは実はあなたの周りに普通に転がっています。あとはあなたが気がつくか気がつかないか、キャッチする気持ちがあるかどうかです。

金融商品に手を出すのも良いですが、ノーリスクな健康預金も同時に実行するならば、あなたのお金はさらに何倍もの価値となるでしょう。これが健康レバレッジです。そしてその逆は?多くの方が目先の損得で動いているように思えてなりません。

《環境・時間・文化・金融・健康》この5つの資本を適正配分することが、この困難な時代を生き抜くヒントにならないでしょうか。