2015年7月21日火曜日

「くる病」が来る!?顕在化する栄養失調


更新が滞っていてすみません、言い訳はともかく、ちょっと放っておけない新聞記事ですのでご紹介を。朝日新聞7月14日の朝刊、「くる病」が来る!?という怖い記事です。


かくれ栄養失調が顕在化してきた、その一端が記事になりました。くる病は、ビタミンDがかなり不足した状況で発症します。戦後のモノ不足の時代に多かったそうですが、食糧事情が改善されたと言われる現代では、まったく無縁と思われてきました。

記事では「消えたはずでは…」とあっけにとられていますが、そんな事はありません。ビタミンDに限らず、また子供に限らず、ほぼあらゆる栄養素が不足している、これが「現代型栄養失調=かくれ栄養失調」です。

ビタミンDは小腸と骨に作用し、主にカルシウムの濃度を維持する働きがあるとされています。不足すれば骨が造られなくなり、小児では成長障害が出て、外見的にはO脚やX脚になります。

記事にあるお子さんは母乳のみで育っています。という事は、そもそもお母さんにビタミンDが不足していたという事になります。食品にビタミンDは少なく、UVカット製品の普及で紫外線からビタミンDが造られる事もなく、またビタミンDを壊したり浪費したりするものの影響も大きい、それが現代社会です。このお母さんはその典型だったのでしょう。

ビタミンDは、何も骨に関わるだけではありません。実は免疫や成長に深く関わっている事が最近注目されています。積極的にサプリメントで補った人では、インフルエンザの発症率を42%も減らした!という研究も報告されています(UrashimaMetal,AmJCIinNutr2010;91;1255-60)

今、私たちのところでは血液検査で「25-OH ビタミンD」というのも計測させてもらっています。これはビタミンDの元となる物質で、ほぼそのままビタミンDの量を反映しています。基準値は7~41とありますが、実際には50~80が理想的と言われ、下の写真のように20以下の方は明らかな不足と考えられています。


よくある血液検査は、明らかな欠乏による最終的な症状にしか焦点をあてていません。鉄は貧血が起きなければ正常、ビタミンCも壊血病がおきなければ正常、亜鉛も味覚異常がおきなければ正常…すべてが基準値内にあれば正常とみなされる、小学生でもできる判断が、医者の仕事とされている事になります。

かくれ栄養失調は、かなりのところまで来ています。それは戦後レベルであり、今回新聞がわかりやすくビタミンD不足の記事を掲載しました。しかし記事ではお母さんの栄養に焦点は当てず、成人全般の栄養不足に言及していません。

私も検査結果を見るたびに、確かにこれでは治療はうまく行くはずはないなと思う事ばかりで、なんとか食事改善やサプリメントの内服を勧めています。具体的な改善例はまだ少ないのですが、メンテナンスを正式に標榜する唯一の歯科医療機関として、このような情報発信も必要だなと感じています。

とにかく皆様、食べ物は簡単にすまさずに、よく考えて摂るようにしましょう。かくれ栄養失調は、明らかにそこまで来ています。