2014年6月20日金曜日

歯科用顕微鏡は特殊な装置なのか?

日本臨床口腔外科医会・6



本会の広告にもあるように、顕微鏡は特殊な治療に使う特殊な装置とお考えの方が多いようです。

たしかに顕微鏡は根菅治療における破折器具の除去や、露出した歯根面に歯肉を移植してカバーするなど、ちょっと日常臨床とは言いがたい治療に使う装置と紹介されてきました。

口腔外科の先生にとっても、血管縫合などのためだけに使う装置と思っている方が多いのも無理なからぬ事です。

もちろんそれらを顕微鏡なしで行う事は難しいでしょうし、逆に言えば顕微鏡の出現により術式が開発され、きちんとトレーニングすれば誰にでも行えるようになったものだと思います。

ではそれ以外の治療には必要ないのかと言えば、ぜんぜんそんな事はありません。顕微鏡は平易な日常で用いてこそ意味があるものと思います。

例えば良く有る治療の一つで、コンポジットレジン修復というのがあります。比較的小さなムシ歯の治療のために行われる方法ですが、実はこの治療の成績というのは私が見る限りあまり良くありません。

どういう事かというと、詰める時にはみ出たり、足りない所が、つまり過不足が非常にでやすいのです。

口の中とは見えそうで見えない所が多い、狭く暗く鏡を使わなくては見えない裏側の治療ではそのような事が頻発します。しかしそれは顕微鏡などで拡大しなくては気づく事もありません。

またそれ以前のムシ歯を除去する段階でも過不足が生じます。ムシ歯をとりきっていない、逆に健康な部分まで削りすぎてしまう、残念ながら肉眼には限界があります。

いろんな過不足があれば当然結果は着いてきません。コンポジットレジンの物性はたいへんな進化をしており、10年前の製品とはまったく異なります。しかし治療成績はというと、まったく変わっていない、これは施術する側のエラーが是正されていない事が最大の原因だと思います。

しかし顕微鏡の出現により、この状況は一変します。どんなに大きなムシ歯でも、最初は小さかったわけですから、その時にきちんと対策をしておけば晩年インプラントにまで進展する事はない、歯科医療とはそういうものだと思うのです。

ただし、それには治療時間と設備投資が必要であり、経営的・法的なハードルが出現します。

また患者さんは治療は早く終わって欲しいと思うし、早い方が腕の良い先生と勘違いするので、顕微鏡の導入は非常にやりにくいわけです。