2011年12月5日月曜日

「レーザー安全講習会」をやってきた


先に日本レーザー歯学会の話をしてしまいましょう。私は学術大会内の「歯科用レーザー安全講習会」で「半導体レーザー」という種類の機械の簡単な仕組みから注意点・臨床例までをざっと解説してきました。

さて何故「安全講習会」などやらなくてはならないのか。誤解を恐れずに言ってしまえば「レーザーは危険」だからです。SF映画や漫画で出て来る殺人光線のイメージは誰にでもあるものでしょう。もちろんあんな事はできないのですが、それでも刃物と同じ、いやそれ以上にアブナイ。

しかしちゃんと理屈が解って安全に配慮すれば、実にすばらしいものです。麻酔をせずに整形ができたり、ガリガリやらずにムシ歯を削ったり、殺菌をしたり、皆が皆ではありませんが、いろんな楽しい応用が考えられます。

ところがその理屈をみんなが知っているのかというと、ぜんぜんそんな事はないのです。そんなバカな!とお思いでしょうが、これが日本の歯科界の現実です。

だいたいレーザーの事なんて、大学ではまったくと言っていいほど教えません。というか、大学にレーザーの事が解っていて教えられる人が非常に限られている。それなのに国家試験にはレーザーの設問があり、健康保険に導入される、信じられません。

統計によると、日本では通算33,000台ものレーザー装置が歯科向けに納品されているのだそうです。これはどう少なく見積もっても、25%の歯科医院に何かしらレーザー機器が置いてある、都心部に限ってみれば50%に迫る普及率と予想されます。

その中でレーザーの事が解って使っている先生がどれくらいおられるのか、かなり疑問です。

というのは日本はメーカーさん主導でレーザー機器が普及している(インプラントも同じでしたが)、つまりメーカーさんが売りたいがために、不正確な情報とともに売られているわけです。だからレーザーの事など何も知らないで使っている先生が多いのです。

一つ例を挙げると、レーザーは眼にはたいへんな障害を与えます。ですから眼の保護のため、絶対に専用のメガネをかける必要がある。ところがこれを守らない方が少なからずおられる。自分だけに問題が起きるならともかく、患者さんやスタッフに障害があってはなりません。

ところがレーザーは眼に見えません。つまり危険を認知する事は不可能です。

しかし専用眼鏡をいちいちするのは面倒でついつい省略してしまう、それが高じてメーカーお抱えのインストラクターの先生やディラーの方が「眼鏡なんていらないですよ、患者さんにはタオルでもかけて目隠ししておけばいいんですよ」と言ってしまう事がある。

歯科医師には「お山の大将」「一国一城の主」的な人が多く、会社組織のように誤りを正してくれる人がおられない環境が普通です。そこにレーザーが入る、どうでしょう。

では私はどうしたか?レーザーは使いたいのだがあまりに解らない事が多すぎて手を出せない。残念ながら当時日本には勉強する場がありませんでした(今もあまり変わらないかな)。そこでディーラーのツテでドイツの大学教授を紹介してもらったり、アメリカの学会に所属し勉強し、認定医までとってきたたわけです(その話はまたいつか)。

33,000台も普及していながら、日本レーザー歯学会の会員は伸び悩み、まだ1000人に達していません。今回の安全講習会の受講者は120人程。学会に所属する先生は意識も高く、レーザーとは何かをある程度解っている先生方に違いありません。問題はここにおられない方。

さらに困った事に、学会場を見渡せば大学の先生ばかりで開業医が少ない。若い開業医の先生がいない、ウーム…

上の世代の先生方によく言われるのですが「君らの世代に続くレーザー馬鹿がいないナ」と(どうせバカですヨーだ!)。これはレーザーに未来を感じる若い人が少ない、あるいはそこまで余裕がないという事、そして広報が決定的に足りない。

しかし先週の顕微鏡歯科学会の盛況を見ると、ちゃんとした表現力をもってすれば大きく変わるのではないかと思っています。

歯科医師であればどうしても知っていなくてはならないレーザーの知識がある、大学やメーカーができなければ学会がやる、私は安全講習会をそんな気持ちでやっています。来年も秋の神戸での大会に合わせて開催が予定されていますが、これだけではちょっと足りないので別枠でできたらいいななんて思っています。もし決まったらすぐにお知らせいたします。

我こそはレーザー馬鹿という方が学会に大勢集まってくれる事を期待しています。あ、本当のバカは困りますよ!

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