2009年2月27日金曜日

歯根尖切除 vsインプラント 2

2月22日から続く

もちろん、なんでもかんでも歯根尖切除ができるわけではありません。できない場合もたくさんあります。以下、かんたんにまとめてみました。

1・器具が入らない場所はできません。

例えば上の第一大臼歯では根っこが3本ありますが、その中で外側の手前の根っこ(近心頬側根・きんしんきょうそくこん)はだいたいできるのですが、内側にある根っこ(口蓋根・こうがいこん)はできません。もう一本の外側の奥の根っこ(遠心頬側根)はできる場合もできない場合もあります。人によって位置・形が違うのです。

また上の奥歯でも第二大臼歯は奥すぎてできない方が多いです。

下の大臼歯はほとんどの場合できないと言って良いでしょう。それから根っこの形が特殊で複雑な場合もできません。

つまり歯根尖切除は器具が入り、鏡越しに顕微鏡で見ることができる場所、主に前歯〜小臼歯に適用されるものと考えた方が良いでしょう。

2・いろいろな理由で既に歯を支える骨が無くなっている場合はやめた方が良いでしょう。例えば歯周病が進んでいる場合、膿の袋(嚢胞・のうほう)がが大きくなりすぎている場合です。ただしこれはインプラントも難しい状態です。

3・歯根尖切除だけでは感染源を取りきれない場合も、もちろんできません。歯がすでに割れている場合などがそれにあたります。

4・それから、口がよく開かない方、これも器具が入りませんから、諦めてもらわなくてなりません。

ーーーーーというわけですね。なんでもかんでもできるわけではありません。素直に抜歯してインプラントにした方が良い場合もたくさんあるわけです。理屈は簡単で、ただ「感染源が除去できるかどうか」それだけです。全ての判断基準はこれです。

以上を勘案して、歯根尖切除とインプラントのどちらが将来性があるか、患者さんといっしょになって考える事が重要です。2月22日投稿の「インプラントを始める前に確認したい10項目」と合わせて検討しましょう。

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追記・・・・・・・・・・

先の「前歯2本を抜歯してインプラント」に対し、私がその方針を疑問に思った理由はもう一つあります。インプラントの問題点の一つに次のようなものがあるからです。それは、

2本のインプラントの間の歯肉は無くなる傾向にあり、
ポッカリと隙間が開きやすい

というものです。話しは難しいのですが、簡単に言うとインプラント周りの歯肉の構造が歯のそれとはまったく違うためにこうなります。

ポッカリあくというのは奥歯では我慢できますが、前歯ではカッコ悪いだけでなく、空気が漏れて発音が難しくなることもあります。管楽器を演奏する人に問題が出る事もあります。

そうならないような対策として、歯を抜くと同時にインプラントを入れましょうという方法が主流なわけです。しかしそれも施術から数年はだいじょうぶでしょうが、だんだん歯肉が萎縮して行き、前歯の真ん中がスカスカになる可能性が高くなります。

もし歯根尖切除で2本とも保存できていたなら、そのようなリスクは避けられます。また一本だけでも救う事ができたなら、それだけでもそうとうリスクが回避できるのです。

感染をどこまで除去し機能を維持できるのか、私達は数ある選択肢の中からその人を医学的・社会的・経済的に判断し、最良の方法は何かについていっしょに考える事が大切だと思っています。インプラントを選択する前に、この古くて新しい方法は見直されなくてはならない重要な技術だと断言します。

【予告】
吉田歯科診療室デンタルメンテナンスクリニックは、インプラントだけを推進するものではありません。いろいろな可能性を常にあなたと一緒に考えて行きたいと思っています。

そこでさらにもう一つ、歯根尖切除もできない、けどインプラントもしたくないというあなたには、最後の最後の切り札(?)として、「移植」と「再植」という手が使えるかもしれません。

可能性としてはけっこう低く、積極的に薦める事は少ないのですが、その可能性についても機会を見てアップしていこうと思います。

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今後もこのBlogではメインホームページ掲載予定のコンテンツを前倒しでアップして行く予定です。お楽しみに!