2009年2月8日日曜日

歯根尖切除・インプラントにしない選択肢 2

歯根尖切除、名前からして怖そうですみません。医学用語とはこういうもので、読んで次の如くの「そのままやんけ」の名称です。あ、別名「歯根端切除」ともいいます。まったく同じです。

前文のとおりこれはとっても有効な治療方法で、歯を残す最後の切り札となりえます。もっと見直されなくてはならないです。簡単にレントゲンでご説明いたしましょう。

[1]

根っこの先端が黒く写っているのがご覧いただけると思います。この歯を治療するには冠を外し、さらに深く入っている金属の芯を外さなくてはなりません。芯を外すのにはけっこうなリスクが伴います。外す時の力で歯自体が割れてしまう可能性があるからです。

その前に被っている冠を外さなくてはなりませんが、自由診療の白い歯が入っているために、患者さんは外したくないとおっしゃいます。冠と芯、そしてその先の天然ゴム(レントゲンでは先端部に白く細く写っているもの)が完全に外せれば、やりかたしだいでは治ってくれるかもしれません。チャレンジしてみる価値はあります。しかしそれにし てもリスクは高いです。腫れも痛みも出ていますので、迷っている時間はありません。

「外してみるが、もし割れたら即インプラント」という選択肢があります。インプラントをやりたがる先生は、この方法を強く勧める傾向にあります。しかし私は違います。このレントゲンを見る限りでは「歯根尖切除」は充分適用です。

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というわけで2月2日の投稿のような事をするわけです。結果はこれです。
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[2]

鍵は感染源の徹底除去と切断面の封鎖です。約一年後のレントゲンはこれです。
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[3]

レントゲンの撮影方法が違うので一概に比較はできないかもしれませんが、[1]に比べて[3]は病巣が小さくなっているように見えます。正確に言うと病巣が写っているわけではなく、病巣が小さくなった結果、骨が再生しているのが解るわけです。

「なんだ、全部消えるわけじゃないんだ!?」とお思いでしょうが、実はこの黒い部分は病巣が無くなっても写ります。理由は骨の外側(皮質骨って言います)が元通りに再生するのにはかなりの時間がかかるからです。レントゲンで骨が白く網目状に見えるのは、実はこの皮質骨が写っているからです。内部の柔らかい部分(海綿骨って言います)はほとんど反映されません。ですから[1]の黒い病巣は、実はレントゲンに写るより、ずっと大きいのです。これも発見が遅れる理由になります。

最近は歯科用のCTが普及してきましたので、これらの診断はかなり簡単になりました。良い時代になったものです。

さてなんでこの「歯根尖切除」の話題をとりあげたのか、理由は次回のオタノシミに。